【元気なうちにできること】その5 「生命保険」を利用する!

元気なうちにできること

◆その5 「生命保険」を利用する!

相続トラブルの本当の原因は、「相続財産が少ないからもめない、家族仲がいいからもめない」と誤解していることが多いと言われています。

相続トラブルを防ぐためには、「遺言」「家族信託」などの対策を取ることが大切ですが、「生命保険」を活用することも効果的です。これらを組み合わせて実施することが、より一層相続トラブルを防ぐことにつながります。

「生命保険」を利用する方法について、以下みていくことにしましょう。

1.生命保険を「相続対策」に利用する!

(1)「相続財産」と「生命保険金」との関係は?

生命保険金は、保険契約者に支払われるものではなく、指定された受取人に支払われるものです。ですから、生命保険金請求権は、明確にその生命保険金の受取人が特定人に指定されている場合は、受取人「固有の財産」になります。

生命保険金は、「相続財産」に含まれません! 従って、「遺産分割協議」の対象になりません!

また、「相続財産」に含まれないことにより、「遺留分侵害額請求権」の対象にもなりません!

このことが、生命保険金を「相続対策」に効果的に利用できる大きな「理由」です。

ただし、相続税を計算する場合には、生命保険金は「みなし相続財産」として、固有の相続財産にその生命保険金を加えて相続税を計算することになります。この点は注意が必要です。

(2)生命保険は「相続対策」に具体的にどのように活用できるの?

生命保険金は「相続対策」について、具体的には以下の3つの方法で活用しています。

「遺産分割」対策として活用する!

相続が発生し、相続財産が自宅不動産だけの場合で、自宅不動産に住んでいる相続人がいて売却ができない時は、自宅不動産を分けることがことができないことになります。

この場合は、自宅不動産に住んでいる相続人が自宅不動産を相続して、他の相続人に対してその相続分を「代償金」で支払う「代償分割」にすること多くなっています。

しかし、この「代償金」が無い場合は、「代償分割」できないため、相続トラブルになってしまうこともあります。

そこで生命保険金を利用します。生命保険金の受取人が特定されている場合は、その生命保険金は受取人「固有の財産」になり、相続財産に含まれません! 従って、「遺産分割協議」の対象になりません!

従って生命保険を利用して、もしもの場合は生命保険金をこの「代償金」に充てることによって、「代償分割」することができることになります。

このように生命保険金「遺産分割」対策として効果的に利用することができます!

「納税資金」対策として活用する!

相続税が課税される場合は、相続開始から10か月以内」に相続税の「申告納付」をしなければなりません。

しかも、「現金」で納付しなければなりません。不動産などの現物で納付する「物納」という方法もありますが、条件が厳しく時間もかかるのであまり行われていません。

「遺言」が無い場合は、「遺産分割協議」を実施し、相続財産の帰属を決めることなります。「遺産分割協議」がもめてしまい、時間がかかるような場合は、相続税の納付ができないことになります。

また、相続財産の「不動産を売却」して納税資金にする場合では、売却まで時間がかかり納税時期に間に合わない場合も出てきます。

このような場合、生命保険に加入しておけば、もしもの時この「生命保険金という現金」を相続税の「納税信金」として利用することができます。

このように生命保険金「納税資金」対策として効果的に利用することができます!

「相続税節税」策として活用する!

生命保険金は、「相続財産」には含まれませんが、「みなし相続財産」として、相続税の計算には含めて計算することになります。

しかし、相続税の課税対象となる生命保険金を受け取った場合は、下記金額については相続税が課税されません。相続税の非課税といいます。

「500万円」×「法定相続人の数」=「生命保険金の非課税金額」となります。

この「生命保険金の非課税」を利用することにより、「相続税節税」策として活用することができます!

このように、生命保険を利用することによって、「遺産分割対策」「納税資金対策」「相続税節税策」という活用ができることことが分かりました。

なお、相続税についての解説は、コラム【知っておきたい法律の知識23.「相続税」はどのように課税されるの?】を参照して下さい。

そもそも「生命保険」とはどのようなものなのか?その「基礎知識」を次に確認してみましょう!

2.生命保険の「基礎知識」を確認してみよう!

(1)保険契約の関係者とは?

生命保険の契約に関する用語の意味は次のとおりです。

契約者とは?

「契約者」とは、保険契約を締結し契約上の権利(契約変更など)と契約上の義務(保険料の支払いなど)を有する人をいいます。

被保険者とは?

「被保険者」とは、保険の対象にされる人をいいます。

保険料負担者とは?

「保険料負担者」とは、保険料を支払う人をいいます。

保険金受取人とは?

「保険金受取人」とは、契約者が指定した保険金を受け取る人をいいます。

納税義務者とは?

「納税義務者」とは、税金を納付する義務のある人をいいます。

(2)生命保険の種類はどんなものがあるの?

生命保険の契約は、「主契約」「特約」で構成されています。

「主契約」は、生命保険のベースとなる部分のことです。

「特約」は、主契約にオプション的に追加するものです。

生命保険の種類(主契約部分)は大きく分けて次の3つの種類があります。

定期保険とは?

「定期保険」とは、一定の保険期間は、死亡保障があり、安い保険金で大きな死亡保険金が保証されます。

しかし、掛け捨てタイプで、満期保険金はありません。保険金額が、変わらないタイプ、減っていく対応、増えていくタイプがあります。

保険期間が満了したら保険は終了しますので、更新する場合は、保険料が再計算され、通常は保険料が高くなります。

終身保険とは?

「終身保険」とは、一定期間保険料を払い込むと、一生涯、死亡保障が継続される保険です。

満期保険金はありません。保険料の払い込みが、一定期間で終了する有期払込と一生涯払い続ける終身払込の2つのタイプがあります。

「死亡」により必ず「保険金」が受け取れます。

この生命保険が、「相続対策」には向いています!

養老保険とは?

「養老保険」とは、保険期間は一定で、その間に死亡した時には、死亡保険金が受け取れ、満期時に被保険者が生存していた場合は、満期保険金が受け取れる保険です。

保険期間満了時には「満期保険金」が受け取れます。

保険期間が満了したら保険は終了しますので、更新する場合は、保険料が再計算され、通常は保険料が高くなります。

保険料が高く、保証は低い保険ですが、貯蓄性があります。

(3)生命保険契約と税金の関係はどうなるの?

死亡保険金の課税関係はどうなるの?

被保険者が死亡して、保険受取人が「死亡保険金」を受け取った場合は、保険契約の内容によって、「税金の種類」は次のとおりになります。

被保険者 保険料負担者 保険金受取人 税金の種類
所得税
相続税
贈与税

保険料負担者と受取人が同じ場合は、「所得税」になります。所得税が課税される場合、死亡保険金を一時金で受領した場合は「一時所得」になり、死亡保険金を年金で受領した場合は「雑所得」になります。

保険料負担者と受取人が違う場合は、「贈与税」になります。

それ以外は、死亡を原因としているので「相続税」が課税されます。

満期保険金、解約返戻金の課税関係はどうなるの?

生命保険契約(養老保険など)が満期になって保険受取人が「満期保険金」を受け取った場合や、解約により「解約返戻金」を受け取った場合は、保険契約の内容によって、「税金の種類」は次のとおりになります。

保険料負担者 保険金受取人 税金の種類
所得税
相続税

保険料負担者と受取人が同じの場合は、「所得税」となり、「満期保険金等」を一時金で受領した場合は、「一時所得」となり、「満期保険金等」を年金で受領した場合は、「雑所得」となります。

保険料負担者と受取人が違う場合は、「贈与税」となります。

なお、一時払養老保険等で保険期間等が5年以下のもの及び保険期間等が5年超で5年以内に解約されたものは、源泉分離課税が適用され、源泉徴収だけで課税関係は終了します。

課税関係のまとめ

生命保険契約と税金の関係は、

保険事故発生時(死亡・満期など)に

契約者(保険料負担者)から

保険金受取人に

保険金の移転があったものとして、課税する

「保険契約者(保険料負担者)」 ➡ 「受取人」 に移転する! 「受取人」が納税する!

ということになります。

(4)生命保険金の非課税額って何なの?

生命保険金は、「相続財産」には含まれませんが、「みなし相続財産」として、相続税の計算には含めて計算することになります。

しかし、相続税の課税対象となる「生命保険金を受け取った場合は、下記金額については相続税が課税されません。相続税の非課税額といいます。

「500万円」×「法定相続人の数」=「生命保険金の非課税額」となります。

例えば、相続人が3人の場合は、「生命保険金の非課税額」は 500万円×3人=1500万円となり、受け取った「死亡保険金」が、1500万円以下の時は、相続税はかかりません

この「生命保険金の非課税額」を利用することにより、「相続税節税」策として活用することができます!

(5)その他について

特別受益と生命保険金の関係は?

「特別受益」とは、特定の相続人が、被相続人から婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として生前贈与や遺贈を受けている時の利益をいいます。

特定の相続人が、被相続人から特別の利益を受けている時は、その利益分を遺産分割協議の際に計算に入れて修正を行うことが公平といえます。この受益分の考慮のことを、「特別受益の持ち戻し」といいます。

しかし、生命保険金については、受け取った相続人の「固有の財産」であるので、原則として「特別受益」には該当しません。

ただし、判例(平成16年10月29日最高裁)は、相続人間の「不公平が民法九〇三条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」は、生命保険金も特別受益になるとしています。大まかに生命保険金が相続財産全体の過半以上の場合が該当するといわれています。

相続放棄と生命保険金の関係は?

「被相続人の多額の借金のため、相続は放棄したいけど、自分が受取人に指定されている生命保険金は受け取りたい」というケースもあると思います。

この場合、「相続放棄」をして「死亡生命保険金」受け取ることは可能です。

死亡生命保険金は、本来の相続財産ではなく、あくまで相続税計算上の「みなし相続財産」であるからです。従って、生命保険金は受取人の「固有の財産」であり、相続を放棄しても受け取ることができます。

ただし、「注意点」がひとつあります。

それは、保険金を受け取る際、「死亡保険金」と一緒に支払われることの多い「入院給付金や手術給付金」を受け取ってはなりません。

この「入院給付金や手術給付金」は、被相続人が本来受け取るもので、被相続人の死亡により、被相続人が負担していた生命保険契約の保険なのです。つまり「相続財産」に該当します。

これらを受け取ってしまうと、「相続財産を承認したもの」とみなされ、「相続放棄が認められない」こともあるからです。この点は注意が必要です。

また、相続放棄をした場合、相続財産にかかる基礎控除額である3000万円+600万円×法定相続人の数」の法定相続人の数に相続放棄した人の人数を含めて相続税の計算をすることができます。

しかし、生命保険金の非課税額である500万円×法定相続人の数」の法定相続人の数に相続放棄した人の人数は含まれないので注意が必要です。

税務署は生命保険金の支払いが分かるの?

ここで質問です。「税務署は、相続人に死亡保険金等が支払われたことが分かるのでしょうか?」

正解は、「税務署には分かってしまいます。」

何故なら、保険会社が一定額の保険金等を支払った場合には、税務署に対して「支払調書」という通知書の提出義務があるからです。

「支払調書」を受け取った税務署は、その受取人の所得税の確定申告や相続税の申告に正しく計上されているか等の資料とします。

「支払調書」は、「死亡保険金・満期保険金・解約返戻金等」の場合は、1年の支払金額が「100万円を超える」時に提出します。

また、「支払調書」は、「年金等」の場合は、1年の支払金額が「20万円を超える」時に提出します。

なお、源泉分離課税の対象となるものは提出がありません。

平成30年1月1日以降は、「支払調書」「契約者の変更」も記載事項となり、保険契約者の変更の情報も税務署に通知されることになりました。

3.相続対策「前」に行なう生命保険確認の「ポイント」とは?

相続対策で生命保険を利用する場合は、最初に現在の保険契約の内容等を確認して進めることになります。ここでは、どのような点に注意して確認していくのかその「ポイント」をみていきましょう。

(1)「保険契約書」を確認する!

「関係者」の確認をする!

特に、生命保険金が「贈与税」課税される場合(「保険料負担者」と「受取人」が異なっている場合など)については、「受取人」を「保険料負担者」に「変更する手続き」をしておくが大切です。

契約内容の「変更」があるかどうか確認をする!

「変更」があった場合は、その理由課税される税目(所得税、贈与税など)を確認してようにしましょう。

加入保険の「内容」を確認する!

自分自身の「ニーズ」に合った保険であるのか、ただ単に保険の営業員に勧められたものであるのかなどを確認しましょう。

(2)「保険金受取人」を確認する!

独身時代に契約した保険は、保険受取人が親のケースが多い!

結婚後は、配偶者に受取人変更することを忘れないようにしましょう。

受取人が、被保険者よりも先に死亡している契約で、被保険者が死亡した場合はどうなるの?

例えば、契約者:父 被保険者:父 受取人:母(以前に死亡)の場合では、

原則は、被保険者(父)が死亡前に、契約者(父)が受取人を新しい受取人に変更することになります。

新しい受取人を指定する前に、被保険者(父)が死亡した場合は、契約上受取人(母)の相続人が受取人となります。相続割合は「法定相続割合」「均等分割割合」など保険契約約款での確認が必要となります。

また、保険法の改正により、「遺言」によっても「受取人を変更する」ことができるようになりました。

保険会社は、契約上の受取人からの請求があれば、契約上の受取人に保険金を支払います。支払い後に、遺言による受取人変更の申し出があっても、改めて支払うことはありません。

トラブルを避けるために、予め受取人変更手続きをするようにしましょう。遺言による受取人変更がある場合は、速やかに保険会社に連絡することにしましょう。

(3)「保険契約者」を確認する!

契約者存命中の変更があるかどうか確認する!

例えば、契約者:夫 被保険者:夫 満期保険受取人:夫 死亡保険金受取人:妻 の場合で

契約者及び満期保険金受取人を夫から妻に変更していた時は、保険金受取時に、保険料負担者の負担割合に応じて税目(所得税、贈与税)が決定されます。

契約者等の変更時点では、課税関係は発生しません

契約者死亡による契約者の変更(保険事故未発生)があるかどうか確認する!

例えば、契約者:夫 被保険者:妻 満期保険金受取人:夫 死亡保険金受取人:夫 の場合で

契約者の夫が死亡した時に、新しく契約者となった妻が「生命保険契約に関する権利」(解約返戻金相当額)「相続」したとして相続税の課税対象になります。

被相続人が保険料を支払っている契約で、「死亡保険金を受け取らない契約」については、「解約返戻金相当額」「相続財産」になり、税務調査での指摘が多いので注意が必要です。

「支払調書」にも「契約者の変更」が記載されますので、税務署は契約者変更を把握しています。

(4)「契約者」と「保険料負担者」が異なっているか確認する!

例えば、契約者、被保険者、満期保険金受取人がすべて「子」の場合で、保険料は、「父」の口座から引き落としされている時は、「名義保険」に該当します。

この場合は、満期保険金受取時に「父」から「子」への贈与があったとして「贈与税」が課税されます。

(5)「死亡保険金」と「入院給付金など」の取り扱いについて確認する!

「死亡保険金」は受取人の固有の財産で「相続財産」ではありません。ただし相続税法では、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

「入院給付金や手術給付金等」は、本来、被保険者が受け取る給付金になります。被保険者の死亡後に受け取る場合は、本来の「相続財産」(未収入金)として、相続税の課税対象になります。

また、本来の「相続財産」(未収入金)なので、「遺産分割協議の対象」になりますので、注意が必要です。

4.「遺産分割対策」としての活用法とは?

(1)相続対策に生命保険が有効とされる「ポイント」とは?

相続対策に生命保険が有効とされる「ポイント」は次のとおりです。

確実に「現金」を得ることができる!

保険事故が発生した場合、確実に「現金」を受け取ることができることが、相続対策では重要なことになります。生命保険はこの点で有効な相続対策として利用できます。

相続財産の「分割」に有効であること!

生命保険契約を分けることにより、事前に相続人ごと必要な金額を設定できることも、相続対策では必要になります。

「早期」に現金化ができること!

遺産分割協議をすることを要せず、受取人が保険会社に請求手続きを行うだけで、現金を受け取ることができます。これは相続対策では非常に有効な方法になります。

「いつでも」現金化ができること!

保険事故発生前であっても、いつでも保険契約の解約が可能であるので、解約返戻金を受け取ることができます。また、解約をせずに契約者貸付等により、一時的な資金需要にも応じることができます。

「リスク」が少ないこと!

アパート建築による相続対策は、空室リスク、保有時の税金、借入金の返済などいろいろなリスクが考えられます。生命保険による相続対策のリスクとしては、保険会社の倒産と保険料を将来にわたって払い続けることができるかどうかということが考えられます。しかし、他の方法に比べてリスクが少ないといえます。

(2)生命保険を利用して代償分割の「代償金」を用意する!

実際の相続対策で一番有効な手段として活用できるのは、「代償金」として生命保険金を利用することだといえます。これについて、具体的にみていきましょう。

代償分割とは?

「代償分割」とは、特定の相続人が相続分を超える財産を相続する代わりに、他の相続人に対して現金(代償金)を支払う遺産分割の方法です。例えば、自宅不動産を長男がすべて相続する代わりに二男に長男が現金(代償金)を支払う分割方法です。

代償分割はどのような場合に利用するのか?

自宅、農地等の不動産自社株式等が主な相続財産で、分けることが難しく、また分割してしまうと不都合が生じるケースなどには、代償分割が向いています。

代償金と贈与税等の関係は?

代償金を支払う場合は、「贈与税」「所得税」も課税されません。これは、代償金を受け取る相続人が、その現金を「相続」により取得したことになるからです。

ただし、代償財産として、金銭以外の財産例えば不動産を与えると、その相続人に「売却したもの」とみなされて、譲渡利益に「譲渡所得税」が課税されることになりますので、注意が必要です。

代償財産は、現金にて支払うことが重要です!

どんな具体例があるの?

生命保険金に相続税が課税されるケースとは!

契約者:父 被保険者:父 受取人:長男 の場合で、長男が受け取った生命保険金で、他の相続人に代償金を支払うケースは、受け取った生命保険金には相続税が課税されますが、生命保険金の非課税枠の利用ができます。相続税が高額でない場合や、生命保険金の非課税枠が残っている場合は、効果的に利用できます。実際利用する場合は、具体的なシュミレーションをすることになります。

生命保険金に所得税が課税されるケースとは!

契約者:長男 被保険者:父 受取人:長男 の場合で、長男が受け取った生命保険金で、他の相続人に代償金を支払うケースは、受け取った生命保険金は一時所得となり所得税を支払うことになります。相続税が高額になる場合に、保険料贈与と組み合わせて利用することがあります。これも利用する場合はシュミレーションが必要になります。

(3)生命保険を活用する場合の留意点とは?

生命保険を活用する場合の留意点は、次のとおりになります。

被保険者が健康で生命保険に加入できること

相続対策で生命保険を利用する場合は、一般的に被保険者の年齢は高齢になります。従って健康状態によっては、保険に入れないこともでてきます。被保険者が生命保険に入れるかどうかが大きなポイントとなります。また生命保険会社や保険の種類によっては審査基準に差がある場合もあります。

保険料の支払いを継続できること

ある程度の金額の保険金の契約をする場合は、契約者が高齢になると保険料がどうしても高額になります。せっかく生命保険に加入しても保証の必要な時まで保険料の支払いができないのでは効果がありません。支払い方法や保険の種類を検討することも重要です。

保険は長期的に加入することが前提!

生命保険に加入する目的は、被保険者の死亡という保証事故が発生し、死亡保険金が相続人に入ってくることです。あくまで相続対策を目的とするために、短期に解約することを前提した保険契約は相続対策に向いていません。もちろん途中で解約返戻金を相続対策で活用する場合も考えられますが、その場合は、保険商品を選択し、加入目的を明確にすることが必要です。

加入目的により保険の種類を選択する!

相続対策で生命保険を活用する場合、それぞれの目的によって、活用する保険種類が違ってきます。

生命保険の活用目的をはっきりさせて、それに適した保険種類を選択することが必要となってきます。

5.「納税資金対策」としての活用法とは?

生命保険金を納税資金として活用する方法とは、次のとおりになります。

(1)相続発生とともに受取人に支払われることが重要!

生命保険の死亡保険金は、契約上の保険金受取人が保険会社に請求するだけで、受取人の口座に振り込まれます。

保険金請求から入金まで時間がかからないため、相続税の申告・納付期間である10か月以内には十分間に合います。

従って、納税資金対策として、生命保険金を活用することは効果的です。

(2)納税資金確保のために保険料を贈与する!

生命保険金を相続税の納税資金にする場合、保険料の支払いが継続してできるのかが、重要な問題になってきます。ここでは、この問題にどのように対応するかみていきましょう。

基本的な考え方は?

親の相続対策として、子に「現金」「贈与」することは、相続財産を減少させることからよく利用されています。

子が生命保険を契約して、親から贈与された「現金」をその「保険料」の支払いに充てることにより、一層相続対策の効果が高まります。

効果はあるの?

親が死亡した場合の死亡保険金については、「相続税」では無く、「所得税(一時所得)」の対象となります。

課税される「相続税」と比較して、「一時所得」課税の方が有利であれば、節税効果もあります。

また、その保険金を相続税の納税資金として利用できます。

子に「現金」「贈与」すると、子が勝手にその「現金」を遊興費に使うこともありますが、生命保険の「保険料」の支払いに充てることになれば、その問題も解決できます。

スキームはどうなるの?

親が子に現金を贈与する!

贈与金額によるが、「贈与税」が課税される場合は、子が「贈与税」を支払うことになります。

子がその現金で保険料を支払う!

親の死亡により死亡保険金が子に入金される!

保険料負担者と受取人が同じなので、死亡保険金には「所得税(一時所得)」が課税されることになります。この保険金には「相続税」が課税されません。

ポイントとは?

現金贈与時の「贈与税」と死亡保険金受取時の「一時所得の所得税」と、予想される「相続税」を比較して、「相続税」の税率以下で実施することが節税になります。

(3)「現金」贈与時の注意点とは?

現金を贈与する場合、気をつけなければならない点があります。注意点とは、次のとおりです。「

贈与を受ける人(受贈者)が、贈与を受けたことを認識すること!

贈与契約書を作成すること!

税額が発生する場合は、贈与税の申告をすること!

贈与を受ける人(受贈者)は、自分名義の口座を開設すること!

生命保険料控除は、受贈者が受けること!

定期贈与にならないこと!

「定期贈与」とは、契約書を作成して一定期間、一定の財産を贈与することをいいます。

例えば、総額1000万円を、10年間、毎年100万円を贈与するというものです。

この場合は、総額1000万円を贈与するということが先にあって、10年間分割で支払うものなので、「贈与税」は1000万円に対して課税されますので、注意が必要です。

6.「相続税節税対策」としての活用法とは?

生命保険を相続税節税対策として活用する方法は、次のとおりです。

(1)生命保険等の非課税枠を利用する!

以下の説明は前に説明した箇所と重複するところがありますが、理解を深めるためにもう一度説明させていただきます。

生命保険金は、「相続財産」には含まれませんが、「みなし相続財産」として、相続税の計算には含めて計算することになります。

しかし、相続税の課税対象となる「生命保険金」を受け取った場合は、下記金額については相続税が課税されません。相続税の非課税額といいます。

「500万円」×「法定相続人の数」=「生命保険金の非課税額」となります。

例えば、相続人が3人の場合は、「生命保険金の非課税額」は 500万円×3人=1500万円となり、受け取った「死亡保険金」が、1500万円以下の時は、相続税はかかりません

ただし、非課税の適用があるのは、「相続人」が受け取った生命保険金に限られます。「相続人以外の者」が受け取った生命保険金には、生命保険金の非課税が適用されません

この「生命保険金の非課税額」を利用することにより、「相続税節税」策として活用することができます!

(2)生命保険加入の実情は?

「相続対策として生命保険を活用しているケース」「全く生命保険が無いケース」とに二分化されている状であると言われています。

「全く生命保険が無いケース」では、被相続人が生命保険嫌いだったため、誰も勧めてくれなかった、定期保険に加入していたが相続時点では満期だった等の理由で、生命保険が相続対策として活用されていなかったようです。

(3)「相続対策」としての「保険商品」とは?

相続対策としての「保険商品」としては、次のようなものがあります。

一時払い終身保険

一定額の保険料を「一括」して払い込む「終身保険」です。死亡時には払込保険料以上の保険金が支払われるほか、途中解約した場合も、銀行の定期預金以上の金利もつくことから、預金の代替として加入するケースも多くなっています。

◆生命保険の相続税非課税枠を確保するために利用することがあります。

◆相続税の納税資金として利用することがあります。

◆定期預金の代わりとして利用することがあります。

◆生前贈与した資金を保険料として使うため利用することがあります。

年払い終身保険・年払い年金保険

「年払い終身保険」とは、「毎年」保険料を支払うことにより、将来の相続発生時に確実に保険金を受け取る「終身保険」です。

「年払い年金保険」とは、「毎年」保険料を支払うことにより、子供たちの将来の「年金」の追加分として準備しておく「年金保険」です。

◆生前贈与と保険加入のスキームの利用先として利用することがあります。

◆払込保険料が被保険者の加入年齢により高くなり、受取保険金が低くなる場合もあるので注意が必要です。

(4)預貯金を保険金に変えてしまう方法も!

「相続財産」のうち、「預貯金・現金」を減少させて、結果として「相続財産」を減らし、相続税を少なくすることができます。

また同時に、その「預貯金・現金」「生命保険」の保険料に充てて、「生命保険」非課税枠も利用することもできます。

つまり、相続税の節税を図る方法で「ダブルの節税策」となっています。

「預貯金・現金」「生命保険」に変えてしまうこととなります。

7.まとめ

1.「相続対策」における「生命保険」のメリットは、以下のとおりです!

(1)遺産分割協議が不要な財産であること!

受取人が単独で請求でき、すぐ現金化ができることが大きなメリットです。

また、「遺留分侵害額請求権」の対象にならないこともメリットです。

(2)受取人を指定できること!

誰にいくら遺したいというように受取人の指定ができます。また、相続権の無い人(孫な

ど)にも現金を残せます。

(3)すぐに現金化できること!

(4)生前贈与の使い道(保険料)とすることができる!

受贈者(贈与を受けた人)を生命保険の契約者として保険加入ができます。

2.遺産分割の際の「代償金」として利用できます!

3.「納税資金」として利用できます!

4.「相続税節税方法」として利用できます!

「500万円」×「法定相続人の数」まで非課税になります。

5.「生命保険」を相続対策 として 利用できます!

「生命保険」を相続対策として、「遺言」「家族信託」などと組み合わせて、効果的に利用できます!

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