(13)「遺産分割協議」ってどんなことをするの?

知っておきたい法律の知識
  1. ◆「遺産分割協議」ってどんなことをするの?
  2. ◆なぜ遺産分割協議書が必要なの?
    1. ①後々の紛争を予防するため!
    2. ②遺産分割の内容を明確にするため!
    3. ③遺産分割協議の内容を保存するため!
    4. ④相続の手続きを進めるため!
  3. ◆何もしないとどうなるの?
    1. ①いつまでも相続手続きができないことになる!
    2. ②悪用されるおそれがある!
    3. ③相続トラブルが終わらない!
    4. ④権利関係が複雑になってしまう!
  4. ◆遺産分割の方法にはどんなものがあるの?
    1. ①現物分割
    2. ②換価分割
    3. ③代償分割
    4. ④共有分割
  5. ◆遺産分割協議書が無ければできないことは?
    1. ①不動産の相続登記手続きをする場合!
    2. ②銀行預金等を解約・払戻する手続きをする場合!
    3. ③自動車の名義を変更する手続き!
    4. ④株式の名義を変更する手続き!
    5. ⑤相続税の申告手続き!
  6. ◆遺産分割協議の対象となる相続財産とは?
    1. ①相続財産であり、遺産分割協議の対象になる財産の範囲とは?
    2. ②相続財産ではあるが、遺産分割協議の対象とならない財産の範囲とは?
    3. ③相続財産とならない財産とは?
    4. ④相続財産となるか、ならないかが被相続人の属した団体の規定等による場合とは?
  7. ◆遺産分割協議のやり直しはできるの?
    1. ①原則として一度成立した遺産分割協議をやり直すことはできません!
    2. ②遺産分割協議がそもそも「無効」な場合はやり直しができます!
    3. ③遺産分割協議は有効だが「相続人全員が合意」すればやり直しができます!
    4. ④家庭裁判所による調停・審判による遺産分割はやり直しができません!
    5. ⑤遺産分割のやり直しで税務上課税されることがあります!
  8. ◆遺産分割協議の手順はどうなるの?
    1. ①相続人全員を確定する!
    2. ②相続財産を調査する!
    3. ③遺産分割協議の案(タタキ台)を作成する!
    4. ④相続人全員で協議して内容を決定する!
    5. ⑤遺産分割協議書に相続人全員が署名し実印を押印する!
  9. ◆相続法改正による遺産分割等においての見直しとは?
    1. ①配偶者保護のための方策-特別受益における持戻し免除の意思表示推定
    2. ②預貯金債権の遺産分割における取り扱い-遺産分割前の仮払い制度の創設
    3. ③遺産分割前における遺産を処分した場合の遺産の範囲について
    4. ④遺産分割の一部分割について
  10. ◆遺産分割協議書の作成方法は?
    1. ①手書き、パソコン作成、どちらでもOKです!
    2. ②署名と実印押捺、契印・割印が必要です!
    3. ③タイトルと本文の書き方は?
    4. ④相続財産目録をつける!
    5. ⑤遺産分割協議書の作成部数などは?
  11. ◆まとめ
    1. 1.民法は「遺言」が無い場合の「法定相続人」と「その相続割合」について定めておりますが、これはあくまで分数的な「目安」に過ぎず、誰が何をどのように相続するかは、「遺産分割協議」で決めて、「遺産分割協議書」を作成し、全員が署名・実印押捺することが必要になります。
    2. 2.「遺産分割協議」は、相続人「全員の合意」が得られなければ成立しません。
    3. 3.「遺産分割協議書」が必要な理由は、
    4. 4.遺産分割の方法には、「①現物分割」「②換価分割」「③代償分割」「④共有分割」があります。
    5. 5.遺産分割協議の対象になる財産とは、
    6. 6.遺産分割協議の手順は、以下のとおりです。

◆「遺産分割協議」ってどんなことをするの?

「遺産分割協議」とは、相続が起こった時に遺産をどのように分けるか相続人全員で「話し合って決める」ことをいいます。

「遺言」で具体的な遺産分割の指定がされていない場合は、「遺産分割協議」が必要となります。

といいますのも、民法は「遺言」が無い場合の「法定相続人」「その相続割合」について定めておりますが、これはあくまで分数的な「目安」に過ぎず、誰が何をどのように相続するかは、「遺産分割協議」で決めて、「遺産分割協議書」を作成し、全員が署名・実印押捺することが必要になります。

ここで重要なのは、「遺産分割協議は相続人全員の合意が得られなければ成立しない」ということです。

遺産分割する際の基準について、民法906条には、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身も状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と規定されています。

この条文は、遺産分割を実行する際の分割の指針を定めたもので、共同相続人間に遺産分割が算術的に公平に行われるだけでなく、具体的に公平に行われ、かつ遺産の社会的・経済的価値ができるだけ損なわれないように行われることを企図しています。

しかし、結局のところ、遺産分割協議が成立するかどうかは、各相続人がいかに「妥協」して「合意」に達することができるかにかかっていることになります。

◆なぜ遺産分割協議書が必要なの?

①後々の紛争を予防するため!

相続人全員で遺産分割協議をするとき、協議がまとまるためには全員の合意が必要です。同意が得られないとトラブルになったりします。

相続人全員が合意すれば「遺産分割協議書」を作成します。この協議書があれば、後から「合意していなかった」等の言動を封じ込めることができ、トラブルを防止することができます。

②遺産分割の内容を明確にするため!

「遺産分割協議書」があれば、第三者に対しても遺産分割協議があったことを証明することができます。

例えば貴金属を売却する場合、「遺産分割協議書」があれば、その貴金属の正当な所有者であると説明することができます。

③遺産分割協議の内容を保存するため!

相続が起きると、遺産がどのように分割されたかを人の記憶だけでは正確に記憶することは難しく、時間の経過によって記憶があやふやになることもあります。

このような場合、「遺産分割協議書」があれば、遺産分割の内容を正確に保存することができます。

④相続の手続きを進めるため!

「遺産分割協議書」は、具体的に相続手続き進める場合に必要となってきます。

不動産の相続登記手続きをする場合、銀行預金を解約・払戻する手続きをする場合、自動車の名義を変更する手続きの場合など、「遺産分割協議書」が無ければ、相続手続きできないことになってしまいます。

◆何もしないとどうなるの?

①いつまでも相続手続きができないことになる!

「遺産分割協議書」が無ければ、不動産の相続登記手続き、銀行預金を解約・払戻する手続き、自動車の名義を変更する手続き等がいつまでもできないことになってしまします。

②悪用されるおそれがある!

「遺産分割協議書」が無ければ、自分が相続した不動産であっても相続登記ができていないので、誰かが悪用して勝手に売却するおそれがあります。

また第三者の抵当権が勝手に設定されてしまうおそれもあります。

③相続トラブルが終わらない!

「遺産分割協議書」が無ければ、各相続人が勝手にいろいろなことを主張してくる可能性があり、相続トラブルが継続して終わらない状況が続くことになってしまいます。

④権利関係が複雑になってしまう!

「遺産分割協議書」を作らず、長期間放置してしまうと、次の相続が発生してしまう可能性が高まり、不動産について子供の代と孫の代との共有関係が生じることも出てきます。

このように、長期間「遺産分割協議書」が無ければ、権利関係がますます複雑化相続トラブル増加してしまいます。

◆遺産分割の方法にはどんなものがあるの?

具体的に誰が何を相続するかを決めることを「遺産分割」といいますが、遺産分割には次の4つの方法があります。これらの方法を考慮して遺産分割をしていくことになります。

①現物分割

自宅は妻に、預金は長男に、株式は次男になどと、個々の遺産をそのまま分配する方法です。遺産分割の原則的な方法で、現物分割といいます。

メリットとしては、分割がわかりやすいこと、遺産の現物が残せることがあります。

デメリットとしては、相続分どおりに分配することが難しいことがあげられます。

②換価分割

遺産(不動産等)を売却して金銭に換え、それを分配する方法です。現物では、分割しにくい遺産を分配できますが、売却利益に対して所得税と住民税が課税されます。

メリットとしては、公平な遺産分割が可能であることがあげられます。

デメリットとしては、売却の手間と費用がかかること、遺産の現物が残らないこと、譲渡益に対して所得税と住民税がかかることがあげられます。

③代償分割

一部の相続人が、相続分を超える遺産を取得する代わりに、他の相続人に対して相続分の差額金銭(代償金)を支払う方法です。

メリットとしては、公平な遺産分割が可能であること、遺産の現物が残せることがあげられます。

デメリットとしては、代償金を支払う相続人に支払い能力が無いと不可能なことです。

④共有分割

遺産の一部あるいは全部を複数の相続人が持分を決め、それを共有する方法です。

メリットとしては、公平な遺産分割が可能であること、遺産の現物が残せることがあげられます。

デメリットとしては、利用や処分の制限があること、共有者に次ぎの相続が起こると権利関係複雑化することがあげられます。

◆遺産分割協議書が無ければできないことは?

①不動産の相続登記手続きをする場合!

相続登記で遺産分割協議書が必要となる場合は、法定相続分と異なる割合不動産を相続する場合です。

法定相続分と異なる割合登記される場合は、その内容が記載された遺産分割協議書が無ければ相続登記ができません。

②銀行預金等を解約・払戻する手続きをする場合!

預貯金債権は遺産分割協議の対象となる旨の最高裁判決(平成28年12月)によって、遺産分割協議書が無ければ解約や払い戻しができないことになっています。

しかし民法改正によって、現在では、預貯金債権の1/3の部分のうち各人の法定相続分は各相続人が単独で解約、払戻しができるようになっています。

残りの預貯金債権の解約、払戻し手続きについては、遺産分割協議書が無ければ手続きができないことになっています。

③自動車の名義を変更する手続き!

自動車の名義を変更する場合にも、遺産分割協議書が必要となります。陸運局で自動車の名義を変更すには、遺産分割協議書が無ければできません。

④株式の名義を変更する手続き!

株式の名義変更手続きにも、遺産分割協議書が必要となります。

上場株式の場合は、証券代行業務を行っている証券会社へ遺産分割協議書を提示して名義変更してもらうことになります。

また非上場の株式の場合は、株式を発行している会社に連絡して遺産分割協議書を提示し名義変更の手続きをしてもらうことになります。

⑤相続税の申告手続き!

相続税申告の時、各人の相続分に基づいて申告する場合は遺産分割協議書が必要となります。

遺産分割協議書が無ければ、各人の法定相続分に応じた申告しかできないことになってしまします。

配偶者の相続税の控除小規模宅地の特例などを受ける場合も、納付期限までに遺産分割が終了していなければ特例を受けることができないので、遺産分割協議書が必要になります。

相続税を払いすぎた場合、相続税の更生請求することになりますが、この場合も遺産分割協議書により相続分を明確にして請求することが必要になります。

◆遺産分割協議の対象となる相続財産とは?

①相続財産であり、遺産分割協議の対象になる財産の範囲とは?

■不動産 ■預貯金債権(2/3の部分) ■現金 ■不動産賃借権 ■株式 ■社債 ■国債 

■知的財産権(著作権、特許権等) ■満期金保険金請求権 ■動産 ■営業権などがあります。

②相続財産ではあるが、遺産分割協議の対象とならない財産の範囲とは?

次の財産は、遺産分割協議の対象とはならずに法定相続分となります。

■損害賠償請求権 ■金銭債務 ■保証債務などがあります。

③相続財産とならない財産とは?

■生命保険金 ■国家公務員の退職金 ■遺族給付金 ■遺産から生じた果実・収益 ■葬儀費用、香典、祭祀財産などがあります。

④相続財産となるか、ならないかが被相続人の属した団体の規定等による場合とは?

死亡退職金などがあります。団体の規定により扱いが変わります。

◆遺産分割協議のやり直しはできるの?

遺産分割協議のやり直しには、以下のようにやり直しができる場合もありますが、いろいろな問題もあるため、遺産分割協議を行う場合はなるべく一回で成立するようにすることが重要です。

①原則として一度成立した遺産分割協議をやり直すことはできません!

遺産分割をもう一度やり直したいと思う相続人がいたとしても、一度成立した遺産分割協議は、原則としてやり直すことはできません。

なぜなら、相続人全員で話し合った結果、遺産分割協議書にまとめたことで、遺産分割協議終了しているからです。後々の紛争を予防するためにも一度成立した遺産分割協議は原則としてやり直しはできません。

②遺産分割協議がそもそも「無効」な場合はやり直しができます!

しかし、相続人の一部が欠けたり、権限のない相続人以外の者が参加した遺産分割協議「無効」です。「無効」なので初めから効力は無いことになります。

遺産分割の時点で既に相続人で無くなった場合、遺産分割の後で相続の資格を失った場合、詐欺や脅迫によって遺産分割が行われた場合などは、遺産分割協議自体が最初から成立していなかったものとして、やり直しすることになります。

③遺産分割協議は有効だが「相続人全員が合意」すればやり直しができます!

遺産分割協議が成立した後、予期せぬ出来事で遺産分割をやり直したいという状況になった場合は、「相続人全員の合意」があれば、遺産分割協議をやり直すことができます。

遺産分割協議を相続人全員合意解除したうえで、遺産分割協議やり直すことになります。

「遺言」があった場合であっても、「相続人全員の合意」があればその合意のとおりに遺産分割ができます。

④家庭裁判所による調停・審判による遺産分割はやり直しができません!

しかし、当初遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所の「調停」「審判」で遺産分割がされた場合は違います。

家庭裁判所による「調停」「審判」によって遺産分割成立しているので、たとえ相続人全員の合意があったとしてもやり直しはできません。

⑤遺産分割のやり直しで税務上課税されることがあります!

遺産分割協議のやり直しをすることによる相続財産の再分割がなされることで、相続人間の財産の譲渡贈与として取り扱われ課税される場合も出てくる恐れがあります。この点については、よく注意することが必要となります。

◆遺産分割協議の手順はどうなるの?

遺産分割協議書作成までの手順は以下のとおりです。

①相続人全員を確定する!

遺産分割協議は、相続人全員が協議に参加し、合意することが必要なため、相続人一人でも欠けると 遺産分割協議が「無効」になってしまいます。

したがって、相続人全員を「調査すること」「確定すること」が重要になってきます。

相続人調査をするときは、亡くなった人の生れてから亡くなるまでの、すべての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本を取り寄せます。本籍地のあるそれぞれの市町村役場に申請して取り寄せることになります。

この調査は、漏れや抜けが無いように戸籍を連続して取らなければならないので、かなり大変な作業になることが多いと思われますので、行政書士、司法書士などに依頼して取得してもらうこともできます。

②相続財産を調査する!

次に相続財産を調査します。亡くなった方の預金通帳、貯金通帳、現金等を調べます。郵便物を見て金融機関や証券会社からの通知などにも留意します。

不動産については、固定資産税納付書に記載のあるものや権利書などから調査して、登記所で登記事項全部証明書(登記簿謄本)を取得します。

また借入があるかどうかや保証人になっていないか等も契約書が無いか調査します。借入があるかどうかについては、個人信用情報機関(CIC,JICC,全銀協など)に問い合わせることもできます。

相続財産の調査を行ったら、相続財産の範囲と評価額を出して、相続財産目録を作成しておきます。

相続財産目録の作成も大変な作業となるため、行政書士、司法書士などに依頼して作成してもらうこともできます。

③遺産分割協議の案(タタキ台)を作成する!

相続人全員の立場や状況等を考慮して、遺産分割協議の案(タタキ台)作成しておきましょう。

事前相続財産目録と一緒に提示しておいて、遺産分割協議の際に、タタキ台として協議を進める方がスムーズに行く場合があります。基本は、不動産の共有は避けること、平等より公平を目指すことです。

④相続人全員で協議して内容を決定する!

相続人全員で集まり、話し合って具体的に遺産をどのように分けていくのか決めていきます。しかし遠方にいたりして集まれない場合は、電話やメールなどで話し合うことでもかまいません。

相続人全員が納得することが重要です。

できるだけ協議は一回で終わらせることを目指します。持ち帰ると外野の意見が出てきたりしてまとまらなくなることが多いため、持ち帰ることが無いようにその場で決着をつけることに留意します。

話し合うときは、相続の正確な知識を持って、冷静に、無理な主張はせず、相続人それぞれの立場状況などを考慮して進めていくことになります。

⑤遺産分割協議書に相続人全員が署名し実印を押印する!

遺産分割協議によって相続人全員の合意が得られたら、その内容を書面にして遺産分割協議書を作成し、全員が署名し、実印を押捺いたします。

◆相続法改正による遺産分割等においての見直しとは?

相続法の改正により、遺産分割等において下記のような見直しがありました。

①配偶者保護のための方策-特別受益における持戻し免除の意思表示推定

見直しの理由:

当該贈与等の趣旨(生存配偶者の貢献に報い、その生活保障を図る。)を尊重した遺産分割が可能となります。配偶者生活保障にも資することになります。

ポイント:

婚姻期間20年以上の夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に対して居住用不動産遺贈・贈与した場合、民法903条3項の持戻しの免除意思表示があったものと推定することになりました。

遺産分割において、原則、当該居住用不動産の持戻し計算は不要となります。

②預貯金債権の遺産分割における取り扱い-遺産分割前の仮払い制度の創設

ポイント:

預貯金が遺産分割の対象となる場合、各相続人は遺産分割前でも単独で、各金融機関の預貯金の1/3法定相続分をかけた金額(上限150万円)までは、各相続人引き出すことができるようなりました。これで葬儀費用や税金の支払いなどに利用することが可能になりました。

③遺産分割前における遺産を処分した場合の遺産の範囲について

ポイント:

a) 遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができることになりました。

b) 共同相続人の一人又は数人が遺産分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には、当該処分をした共同相続人については、a) の同意を得る必要はありません。

④遺産分割の一部分割について

ポイント:

これまで原則的に否定されていた遺産分割一部分割について、原則的に認めることになりました。

◆遺産分割協議書の作成方法は?

①手書き、パソコン作成、どちらでもOKです!

遺産分割協議書は、手書きでも、パソコンで入力してプリントしても、どちらでも構いません。

内容が大部になるので、パソコンで入力する方が多いと思います。また、用紙の指定もありません。作成が大変な場合は、行政書士、司法書士などに依頼して作成してもらうこともできます。

②署名と実印押捺、契印・割印が必要です!

遺産分割協議書には、相続人全員の署名(自筆で名前を書くこと)と実印の押捺が必要となります。これは相続人全員の合意があったことを証明するためです。印鑑証明書も各人用意して添付します。

また、遺産分割協議書複数葉になった場合は、ページとページにまたがる箇所に「契印」を押捺します。

遺産分割協議書は、人数分作成しますので、すべてが同じ内容であることを証明するため、「割印」を押捺します。具体的には、遺産分割協議書を少しずらしておいて、そこにかかるように相続人全員の印鑑を押捺します。

「契印」「割印」とも、実印で押捺します。

③タイトルと本文の書き方は?

タイトルは、「遺産分割協議書」と記載します。横書きでも縦書きでも構いません。

次に被相続人(亡くなった方)の氏名、最後の本籍地、最後の住所地、登記簿上の住所、生年月日、死亡日を記載します。

相続人の表記も必要です。相続人の住所は印鑑証明書のとおりに記載します。

そして、誰が何を相続するのかを明確に特定するようにします。

不動産の場合は、登記事項全部証明書(登記簿謄本)の表題部のとおりに記載します。

銀行預金については、銀行名、支店名、口座番号等を明確にしておくことが必要です。

また、現物分割、代償分割、換価分割などの分割方法や、相続人間で取り決めた条項を明確に記載します。

また、忘れがちな相続財産についても決めておくことが必要です。

「本遺産分割協議書に記載されていない遺産が発見された場合は誰々がすべて相続する」という条文を記載することも必要です。

この条項が無ければ、遺産分割協議書に記載されていない遺産が発見された場合は、その部分だけの遺産分割協議をしなければならないことになってしまいます。

作成方法が分かりにくい場合は、行政書士、司法書士などに依頼して作成してもらうこともできます。

④相続財産目録をつける!

遺産分割協議書には、協議の前に作成した「相続財産目録」を添付するようにします。

多数の不動産や多額な遺産がある場合は相続財産目録があると分かりやすくなります。

作成する場合は、不動産、現金、預貯金、株式、貴金属など遺産の種類ごとにまとめて記載するようにします。

⑤遺産分割協議書の作成部数などは?

遺産分割協議書は、原則として相続人全員が同じものを所有する部数が必要です。

また遺産分割協議書の署名・押印手続きは、相続人全員が一堂に会する必要はなく、持ち回りで署名・押印しても構いません。

換金化する不動産だけ分けて遺産分割協議書を作成することもできます。また、不動産ごと、他の遺産ごとに遺産分割協議書を作成しても構いません。

遺産分割協議書何通あっても構いません。誰が何を相続してのかを明確しておくことが重要なのです。

◆まとめ

1.民法は「遺言」が無い場合の「法定相続人」と「その相続割合」について定めておりますが、これはあくまで分数的な「目安」に過ぎず、誰が何をどのように相続するかは、「遺産分割協議」で決めて、「遺産分割協議書」を作成し、全員が署名・実印押捺することが必要になります。

2.「遺産分割協議」は、相続人「全員の合意」が得られなければ成立しません。

3.「遺産分割協議書」が必要な理由は、

①後々の紛争を予防するため

②遺産分割の内容を明確にするため

③遺産分割協議の内容を保存するため

④相続の手続きを進めるためです。

4.遺産分割の方法には、「①現物分割」「②換価分割」「③代償分割」「④共有分割」があります。

5.遺産分割協議の対象になる財産とは、

■不動産 ■預貯金債権(2/3の部分) ■現金 ■不動産賃借権 ■株式 ■社債 ■国債 

■知的財産権(著作権、特許権等) ■満期金保険金請求権 ■動産 ■営業権などです。

6.遺産分割協議の手順は、以下のとおりです。

相続人全員確定する

相続財産調査する

③遺産分割協議の案(タタキ台)作成する

④相続人全員で協議して内容を決定する

⑤遺産分割協議書に相続人全員が署名実印を押印する

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