9.「遺言書保管制度」って何なの?

相続ワンポイントコラム

◆ 2020年7月10日より施行される「遺言書保管法」とは?

相続法改正の一環で、「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」に基づく 自筆証書遺言原本の公的保管制度が創設され、2020710より施行されます。

この法律は、高齢化の進展等の社会情勢の変化を鑑みて、相続をめぐる紛争を防止するという観点から、法務局において自筆証書遺言を保管できる制度を設けたものです。

■保管申請手続きはどうするの?

自筆証書遺言を作成したら、本人が申請書と添付書類を用意の上、遺言書保管所(法務局の本局・支局)に来庁して手続きを行います。

遺言書保管所は、①遺言者の住所地もしくは本籍地、または②遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局となります。

保管を申請できるのは、自筆証書遺言を作成した遺言者本人のみです。遺言者本人が、遺言保管所に自ら出頭して申請することが必要です。遺言書保管官によって、氏名その他の本人確認が行われます。

■遺言書の保管方法はどうするの?

遺言書の保管は、遺言書保管官がその原本を遺言書保管所の施設内において保管するとともに、遺言書を磁気デスク等に画像データ化して管理します。

■遺言者生存中の遺言書の閲覧はどうするの?

遺言者は、遺言書を保管している法務局に対して、いつでも遺言書の閲覧を請求することができます。この請求は、遺言者本人が出頭して行わなければなりません。

■遺言書の返還・画像情報等請求はどうするの?

遺言者は、遺言書を保管している法務局に対して、いつでも遺言書の返還画像情報等の消去を請求することができます。この請求は、遺言者本人が出頭して行わなければなりません。

■閲覧申請はどうするの?

死亡した者の相続人、遺言書で受遺者と記載された者、遺言書で遺言執行者と指定された者等は、遺言管理官に対して、その遺言書の閲覧を申請できます。ただし、この請求は、遺言者の死後に限定されています。

相続開始後は、相続人等は、「遺言書の保管の有無に関する証明書」の交付や、遺言書の写し「遺言書情報証明書」閲覧および交付が受けられます。

■検認の免除とは?

遺言書を保管していた者や遺言書を発見した者は、すぐに家庭裁判所に対して「検認」の請求をしなくてはなりません。

「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

遺言書保管所において保管されている遺言書については、家庭裁判所での「検認」免除となります。

これは、遺言書が遺言書保管官によって厳重に保管され、その情報も管理されることから、保管開始後、偽造、変造等の恐れが無く、保存が確実であることから検認が免除になりました。

■遺言保管官からの通知とは?

遺言保管所に遺言書を保管した遺言者が死亡しても、その死亡した者の相続人、遺言書で受遺者と記載された者、遺言書で遺言執行者と指定された者等の関係者に、遺言書管理官から、遺言書を保管している事実の通知がくることはありません。

遺言者は、遺言書を遺言保管所に保管した場合は、保管した事実を、相続人等生前に伝えておくことが必要になりますので、注意しましょう。

また、遺言書保管所では、遺言の内容についての相談は受け付けていません。内容はすべて自己責任となります。

この制度により、自筆証書遺言のデメリットであった、自分で保管しなければならないこと、および偽造・変造・紛失の危険があること、相続開始後、家庭裁判所の検認手続きを経なければ開封できないこと、検認のための手間がかかることが無くなることになります。

今後は、自筆証書遺言が増えることが予想されますが、内容については、民法の厳格な規定により無効となることも多いため、専門家に相談することをお勧めいたします。

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