(5)「遺産の分け方」はどのようにするの?(遺産分割とは?)

知っておきたい法律の知識

◆「遺産の分け方」はどのようにするの?

法定相続人と相続分が決まり、「遺言」が無ければ、実際に誰が何を相続するかを決めなければいけません。

これを「遺産分割協議」といいます。

もし、「遺言」があれば、「遺言」のとおりに遺産を分けることになり、「遺産分割協議」は不要になります。

◆遺産分割協議とは?

「遺産分割協議」とは、相続が起こった時に遺産をどのように分けるか相続人全員で「話し合って決める」ことをいいます。

「遺言」で具体的な遺産分割の指定がされていない場合は、「遺産分割協議」が必要となります。

といいますのも、民法は「遺言」が無い場合の法定相続人とその相続割合について定めておりますが、これはあくまで分数的な目安に過ぎず、誰が何をどのように相続するかは、「遺産分割協議」で決めて、「遺産分割協議書」を作成し、全員が署名・実印押捺することが必要になります。

ここで重要なのは、「遺産分割協議は相続人全員の合意が得られなければ成立しない」ということです。

遺産分割する際の基準について、民法906条には、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身も状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と規定されています。

この条文は、遺産分割を実行する際の分割の指針を定めたもので、共同相続人間に遺産分割が算術的に公平に行われるだけでなく、具体的に公平に行われ、かつ遺産の社会的・経済的価値ができるだけ損なわれないように行われることを企図しています。

しかし、結局のところ、遺産分割協議が成立するかどうかは、各相続人がいかに「妥協」して「合意」に達することができるかにかかっていることになります。

◆遺産分割の4つの方法とは?

具体的に誰が何を相続するかを決めることを「遺産分割」といいますが、遺産分割には次の4つの方法があります。これらの方法を考慮して遺産分割をしていくことになります。

現物分割

自宅は妻に、預金は長男に、株式は次男になどと、個々の遺産をそのまま分配する方法です。遺産分割の原則的な方法で、現物分割といいます。

メリットとしては、分割がわかりやすいこと、遺産の現物が残せることがあります。

デメリットとしては、相続分どおりに分配することが難しいことがあげられます。

換価分割

遺産(不動産等)を売却して金銭に換え、それを分配する方法です。現物では、分割しにくい遺産を分配できますが、売却利益に対して所得税と住民税が課税されます。

メリットとしては、公平な遺産分割が可能であることがあげられます。

デメリットとしては、売却の手間と費用がかかること、遺産の現物が残らないこと、譲渡益に対して所得税と住民税がかかることがあげられます。

代償分割

一部の相続人が、相続分を超える遺産を取得する代わりに、他の相続人に対して相続分の差額を金銭(代償金)を支払う方法です。

メリットとしては、公平な遺産分割が可能であること、遺産の現物が残せることがあげられます。

デメリットとしては、代償金を支払う相続人に支払い能力が無いと不可能なことです。

共有分割

遺産の一部あるいは全部を複数の相続人が持分を決め、それを共有する方法です。

メリットとしては、公平な遺産分割が可能であること、遺産の現物が残せることがあげられます。

デメリットとしては、利用や処分の制限があること、共有者に次ぎの相続が起こると権利関係が複雑化することがあげられます。

これを表にすると、次のようになります。


分割方法 メリット デメリット
現物分割

個々の財産をそのまま相続人に分配する 分割が分かりやすい 財産の現物を残せる 相続分どおりに分配することが難しい
代償分割 一部の相続人に財産を与え、他の相続人に対し金銭支払い債務を負わせる
公平な遺産分割が可能 財産の現物が残せる 債務を負担する相続人に支払い能力がないと不可能
換価分割 財産を売却等して金銭に換えて各相続人に分配する 公平な遺産分割が可能 売却の手間と費用がかかる 財産の現物が残らない 譲渡益に所得税等が課税される
共有分割 数人の相続人で持分を決めて共有する 公平な遺産分割が可能 財産の現物が残せる 利用や処分について他の共有者の同意等が必要となる 共有者に相続が起こると権利関係が複雑化する

◆まとめ

1.具体的に誰が何を相続するかを決めることを「遺産分割」といいますが、遺産分割には次の4つ

の方法があります。これらの方法を考慮して遺産分割をしていくことになります。

現物分割

自宅は妻に、預金は長男に、株式は次男になどと、個々の遺産をそのまま分配する方法です。遺産分割の原則的な方法で、現物分割といいます。

換価分割

遺産(不動産等)を売却して金銭に換え、それを分配する方法です。現物では、分割しにくい遺産を分配できますが、売却利益に対して所得税と住民税が課税されます。

代償分割

一部の相続人が、相続分を超える遺産を取得する代わりに、他の相続人に対して相続分の差額を金銭(代償金)を支払う方法です。

共有分割

遺産の一部あるいは全部を複数の相続人が持分を決め、それを共有する方法です。

2.「遺言」があれば、「遺言」のとおりに遺産を分けることになり、「遺産分割協議」不要です。

3.重要なのは、「遺産分割協議相続人全員の合意が得られなければ成立しない」ということです。

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