◆遺産分割協議の「前」に「特別な手続き」が必要となる場合とは?
次のような場合には、遺産分割協議ができないので、それぞれの場合における「特別な手続き」を経たうえで、遺産分割協議を実施することになります。
これらの手続きには、時間と手間、費用がかかってきますので注意が必要です!
①未成年の子供とその親が同時に相続人になる場合!
両者は遺産分割において利害が対立することになります。この場合は、必ずその未成年の子供の「特別代理人」を選任することになります。
「特別代理人」の候補者を推薦して、家庭裁判所に選任の申立てを行い、家庭裁判所が「特別代理人」の選任審判を行います。そして、この「特別代理人」が未成年者の権利を代理して遺産分割協議に参加することになります。
②認知症の相続人がいる場合!
遺産分割協議の前に、家庭裁判所に「成年後見人」選任の申立てをする等して、 家庭裁判所が認知症の人の代理人となる「後見人等」を選定します。
選任された「後見人等」が認知症の相続人を代理して遺産分割協議に参加することになります。
「後見人等」を選任しないで行った遺産分割協議は、「無効」になることがありますので、注意が必要です。
③行方不明の相続人がいる場合!
相続人の中に行方不明の人がいる場合は、家庭裁判所へ「不在者の財産管理人」の選任を申立て、
「財産管理人」を選任します。
この「財産管理人」が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加して遺産を分割します。さらに、遺産分割協議の内容につき、家庭裁判所へ「権限外行為許可の申立」を行い、この許可を得てはじめて遺産分割協議が有効となります。
不在者の生死も不明で、7年以上の期間が経過している場合は、家庭裁判所へ「失踪宣告」を申し立てる方法があります。
この場合、家庭裁判所の「失踪宣告」の審判により、失踪期間の7年経過後において、「死亡したもの」とみなされますので、「相続人から除外される」ことになります。
「失踪宣告」により、相続人の順位に変動が生じたり、代襲相続が発生したりする場合がありますので注意が必要です。
◆遺産分割協議書に「特別な配慮」が必要な場合とは?
以下のような場合には、遺産分割協議書の作成にあたって、それぞれ「特別な配慮」をすることが必要になってきますので、注意しましょう。
①相続人が海外にいる場合!
相続人が海外にいる場合は、話し合いは電話やインターネットを利用したコミュニケーション方法ですることになりますが、住所を海外に移し、住民票が国内に無い場合は、印鑑登録していないため印鑑登録証明書が取得できないことになります。
すると遺産分割協議書に必要な印鑑登録証明書を添付することができなくなってしまいます。
そこで、このような場合は、外国の在外公館(外国にある日本大使館、総領事館)で「サイン証明」を取得することになります。
正式には「署名証明」といいますが、海外にいる方は、遺産分割協議書の必要となる箇所にサインをして、この「サイン証明」を取得し添付することで、有効な遺産分割協議書を作成することができます。
時間がかかりますので相続税の納税がある場合等は注意が必要です。
②相続分の譲渡があった場合!
「相続分の譲渡」とは、各共同相続人が遺産全体の上に持っている相続持分または相続人の地位を譲渡することをいいます。
共同相続人に譲渡した場合は、相続分を譲受した相続人の相続分が多くなるだけで、特に問題にはなりません。
しかし、第三者に相続分が譲渡された場合は、その譲受人が遺産分割協議に参加することになります。
その譲受人の署名・実印押捺と印鑑登録証明書の添付が無ければ、有効な遺産分割協議書とはなりません。
また「相続分の譲渡」は、遺産分割の前にしなければなりません。既に遺産分割協議が成立した後では、もはや「相続分の譲渡」はできません。
「相続分の譲渡」があった場合は、その内容を正確に把握して遺産分割協議をすることが必要になってきます。
③相続放棄があった場合!
「相続放棄」とは、相続人が自己がために相続があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ「相続放棄」の手続きをすることにより、「最初から相続人でなかった」ものとみなされることをいいます。
その結果、預貯金や不動産などのプラスの財産のみならず、借金などのマイナスの財産も承継しないことになります。
「遺産放棄」をした相続人は「最初から相続人でなかった」ものとみなされるので、遺産分割協議に参加し、署名押印する必要がありませんし、することもできません。
また、「相続放棄」すると、相続の順位が変更することがありますので、関係者にきちんと通知しておくことが重要です。
これと似たものに「相続分の放棄」というものがあります。
「相続分の放棄」は、相続人の地位はそのままで、自分の相続分だけを放棄することをいいます。
「相続分の放棄」をする相続人は、遺産分割協議に参加して、遺産分割協議書において遺産相続しないことを明確にしなければなりません。
「相続放棄」と「相続分の放棄」は、遺産分割協議書との関係で全く違う取り扱いになりますので、注意が必要です。
◆まとめ
1.「特別な手続き」が必要となる場合とは?
①未成年の子供とその親が同時に相続人になる場合!
両者は遺産分割において利害が対立することになります。この場合は、必ずその未成年の子供の「特別代理人」を選任することになります。この「特別代理人」が未成年者の権利を代理して遺産分割協議に参加することになります。
②認知症の相続人がいる場合!
遺産分割協議の前に、家庭裁判所に「成年後見人」選任の申立てをする等して、認知症の人の代理人となる「後見人等」を選定します。選任された「後見人等」が認知症の相続人を代理して遺産分割協議に参加することになります。
③行方不明の相続人がいる場合!
相続人の中に行方不明の人がいる場合は、家庭裁判所へ「不在者の財産管理人」の選任を申立て、
「財産管理人」を選任します。この「財産管理人」が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加して遺産を分割します。さらに、遺産分割協議の内容につき、家庭裁判所へ「権限外行為許可の申立」を行い、この許可を得てはじめて遺産分割協議が有効となります。
2.遺産分割協議書に「特別な配慮」が必要な場合とは?
①相続人が海外にいる場合!
住民票が国内に無い場合は、印鑑登録していないため印鑑登録証明書が取得できないことになります。 このような場合は、外国の在外公館(外国にある日本大使館、総領事館)で「サイン証明」を取得することになります。
②相続分の譲渡があった場合!
「相続分の譲渡」とは、各共同相続人が遺産全体の上に持っている相続持分または相続人の地位を譲渡することをいいます。第三者に相続分が譲渡された場合は、その譲受人が遺産分割協議に参加することになります。
③相続放棄があった場合!
「遺産放棄」をした相続人は「最初から相続人でなかった」ものとみなされるので、遺産分割協議に参加し、署名押印する必要がありませんし、することもできません。また、「相続放棄」すると、相続の順位が変更することがありますので、関係者にきちんと通知しておくことが重要です。