◆ 相続人なのに遺産を全然もらえないの?(遺留分とは?)
遺言書を作成する場合、相続分の指定や遺贈などは、遺言者の自由ですが、すべての財産を勝手に相続人以外の人に遺贈してしまう場合には、遺された相続人の生活や相続の期待が守られなくなり、あまりに不公平になってしまいます。
そこで、そうした不公平を緩和するための制度として「遺留分」があります。
◆ 遺留分とは?
「遺留分」とは、一定の相続人のために法律上確保されるべき最低限の相続できる割合を
いいます。「遺留分を有する相続人」は、兄弟姉妹以外の相続人全部です。
つまり、配偶者、子、直径尊属です。子については、代襲相続であっても認められます。
胎児についても生まれてくれば遺留分を有します。
■「遺留分の割合」とは?
①「直径尊属のみ」が相続人の場合=法定相続分の「1/3」
②「その他」の場合=法定相続分の「1/2」となります。
■遺留分の具体的な割合について
相続人 | 相続人全体 の遺留分 | 配偶者の遺留分 | 血族相続人の遺留分 |
配偶者と
子 | 1/2 | 1/2×1/2 =1/4 |
1/2×1/2=1/4 2人いれば1人当たり 1/4×1/2=1/8 |
配偶者と
直系尊属 | 1/2 | 1/2×2/3 =1/3 |
1/2×1/3=1/6 2人いれば1人当たり 1/6×1/2=1/12 |
配偶者と
兄弟姉妹 | 1/2 | 1/2 | なし |
配偶者のみ | 1/2 | 1/2 | ― |
子のみ | 1/2 | ― | 1/2 |
直系尊属のみ | 1/3 | ― | 1/3 |
兄弟姉妹のみ | なし | ― | なし |
■「遺留分算定の基礎となる財産」はどう計算するの?
遺留分算定の基礎となる財産 =(被相続人が死亡時に有した財産の額)+(贈与された財産の額)-(相続債務)で計算します。
相続人以外に対する贈与は、相続開始前の「1 年間」になされたものに限り算入します。
相続人に対する贈与は。相続開始前の「10 年間」にされた、「婚姻・養子縁組・生計の資本」として 贈与された財産に限り算入します。
負担付贈与は、目的の価額から負担の価額を控除した額を算入します。
また、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなした贈与は、上記の期間制限に関わらず、算入の対象となりますので、注意が必要です。
遺留分算定の基礎となる「財産の評価基準の時」は、相続開始時と解されています。
■各人の「遺留分額」とは?
各人の遺留分額の算定は、以下の計算式により算定します。
「各人の遺留分額」=「遺留分算定の基礎となる財産」× 各人の遺留分率 となります。
■各人の「遺留分侵害額」の算定はどうするの?
遺留分権利者が、被相続人から現実に得た利益(「純取り分額」といいます)が遺留分額に達しない場合、その差額が「遺留分侵害額」となります。
これを計算式にすると、以下のようになります。
「遺留分侵害額」=「遺留分額-純取り分額」 となります。
「純取り分額」= 特別受益額 + 具体的相続分額 - 相続債務負担額
■民法改正で「遺留分侵害額請求権」に変更されたとは?
民法改正で、「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」に変更になり、「金銭債権化」しました。
「遺言」においても。「遺留分」は侵害できず、侵害した場合は、遺留分権利者は、受遺者・受
贈者とその包括承継人に対して「遺留分侵害額請求権」による金銭請求ができます。
遺留分侵害額請求権の行使について、受贈者又は受遺者に対する意思表示によってこれを行えば足り、必ずしも裁判上の請求によらなくてもいいことになっています。
裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、遺留分侵害額債務の全部又は一部の支払につき「相当の期限」を許与することができることになっています。
■遺留分侵害額請求の消滅とは?
遺留分侵害額請求権の行使期間は、1年間です。
この「1年間」の起算日は、相続開始または遺留分を侵害することを知った日からになります。
また、相続の開始の時から10年を経過したときは、遺留分侵害額請求権が消滅します。
■遺留分の放棄とは?
相続開始前の「相続の放棄」は認められませんが、「遺留分の放棄」は認められます。
相続開始前の「遺留分の放棄」には、家庭裁判所の許可が必要です。
相続開始後の「遺留分の放棄」は、自由に行うことができます。
放棄の方法には、特段の規定がありませんので、遺産分割協議の場で表明しても有効です。
なお、共同相続人の1人のした「遺留分の放棄」は、他の各共同相続人の「遺留分」に影響を及ぼさないこととなっています。
◆まとめ
1.「遺留分」とは、一定の相続人のために法律上確保されるべき最低限の相続できる割合をいいます。
2.「遺留分を有する相続人」は、兄弟姉妹以外の相続人全部です。
つまり、配偶者、子、直径尊属です。子については、代襲相続であっても認められます。
3.「遺留分の割合」とは?
①「直径尊属のみ」が相続人の場合=法定相続分の「1/3」
②「その他」の場合=法定相続分の「1/2」となります。
4.「各人の遺留分額」=「遺留分算定の基礎となる財産」× 各人の遺留分率 となります。
5.各人の「遺留分侵害額」の算定は、遺留分権利者が、被相続人から現実に得た利益が遺留分額に達しない場合、その差額が「遺留分侵害額」となります。
6.民法改正で、「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」に変更になり、「金銭債権化」しました。「遺言」においても「遺留分」は侵害できず、侵害した場合は、遺留分権利者は、受遺者・受贈者とその包括承継人に対して「遺留分侵害額請求権」による金銭請求ができます。
7.遺留分侵害額請求権の行使期間は、1年間です。
この「1年間」の起算日は、相続開始または遺留分を侵害することを知った日からになります。
また、相続の開始の時から10年を経過したときは、遺留分侵害額請求権が消滅します。
8.相続開始前の「遺留分の放棄」には、家庭裁判所の許可が必要ですが、相続開始後の「遺留分の放棄」は、自由に行うことができます。
9.「遺言書」を作成する場合は、遺留分を考慮することが必要です。せっかく「遺言書」を書いたのに、遺留分侵害があった場合は、遺留分侵害額請求をされてしまい、思わぬトラブルになることもあります。
遺留分を考慮して遺言書を作成しましょう!