◆ 家庭裁判所での「検認」手続きとは?
遺言書を保管していた者や遺言書を発見した者は、すぐに家庭裁判所に対して「検認」の請求をしなくてはなりません。
「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
■遺言検認申立ての手続き
項目 | 内容 |
申立人 | 遺言の保管者 遺言書の発見者 |
申立先 | 遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
必要書類など | 遺言検認申立書 遺言者の出生から死亡までの戸籍・除籍・原戸籍謄本 申立人及び相続人全員の戸籍謄本、住民票 遺言書 ※ケースにより別の書類が必要になる場合があります。 |
申立費用 | 収入印紙800円 ∔ 切手代 |
「検認申立て」が受理されると、検認期日が指定され、相続人やその他利害関係人全員が呼び出されたうえで、遺言書の原本に検認調書が付されます。検認日に立ち会わない相続人がいても検認手続きは行われます。手続き期間は、申立てから検認まで約1か月はかかります。
「検認」の手続きをせずに遺言を執行したり、家庭裁判所以外で遺言を開封した場合は、遺言が無効になることはありませんが、過料に処せらることがあります。
遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行した者は、5万円以下の過料に処する。(民法1005条)
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。(民法1004条3項)
家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。(民法1005条)
遺言の執行をするためには,遺言書に「検認済証明書」が付いていることが必要ですので、「検認済証明書」の申請(遺言書 1 通につき 150 円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要となります)をすることになります。
「検認済証明書」の無い遺言書では、不動産や預貯金など遺産の名義変更ができないので注意しましょう。
なお、公正証書遺言は、「検認」を受ける必要がありません。
◆2020年7月10日より施行される「遺言書保管法」とは?
相続法改正の一環で、「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」に基づく 自筆証書遺言原本の公的保管制度が創設され、2020年7月10日より施行されます。
この法律は、高齢化の進展等の社会情勢の変化を鑑みて、相続をめぐる紛争を防止するという観点から、法務局において自筆証書遺言を保管できる制度を設けたものです。
■遺言書の保管申請手続き
自筆証書遺言を作成したら、本人が申請書と添付書類を用意の上、遺言書保管所(法務局の本局・支局)に来庁して手続きを行います。
遺言書保管所は、①遺言者の住所地もしくは本籍地、または②遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局となります。
保管を申請できるのは、自筆証書遺言を作成した遺言者本人のみです。遺言者本人が、遺言保管所に自ら出頭して申請することが必要です。遺言書保管官によって、氏名その他の本人確認が行われます。
■遺言書の保管方法
遺言書の保管は、遺言書保管官がその原本を遺言書保管所の施設内において保管するとともに、遺言書を磁気デスク等に画像データ化して管理します。
■遺言者生存中の遺言書の閲覧
遺言者は、遺言書を保管している法務局に対して、いつでも遺言書の閲覧を請求することができます。この請求は、遺言者本人が出頭して行わなければなりません。
■遺言書の返還・画像情報等請求
遺言者は、遺言書を保管している法務局に対して、いつでも遺言書の返還と画像情報等の消去を請求することができます。この請求は、遺言者本人が出頭して行わなければなりません。
■閲覧申請
死亡した者の相続人、遺言書で受遺者と記載された者、遺言書で遺言執行者と指定された者等は、遺言管理官に対して、その遺言書の閲覧を申請できます。ただし、この請求は、遺言者の死後に限定されています。
相続開始後は、相続人等は、「遺言書の保管の有無に関する証明書」の交付や、遺言書の写し「遺言書情報証明書」の閲覧および交付が受けられます。
■検認の免除
遺言書保管所において保管されている遺言書については、家庭裁判所での「検認」が免除となります。
これは、遺言書が遺言書保管官によって厳重に保管され、その情報も管理されることから、保管開始後、偽造、変造等の恐れが無く、保存が確実であることから検認が免除になりました。
■遺言保管官からの通知
遺言保管所に遺言書を保管した遺言者が死亡しても、その死亡した者の相続人、遺言書で受遺者と記載された者、遺言書で遺言執行者と指定された者等の関係者に、遺言書管理官から、遺言書を保管している事実の通とがくることはありません。
遺言者は、遺言書を遺言保管所に保管した場合は、保管した事実を、相続人等に生前に伝えておくことが必要になりますので、注意しましょう。
■その他
また、遺言書保管所では、遺言の内容についての相談は受け付けていません。内容はすべて自己責任となります。
この制度により、自筆証書遺言のデメリットであった、自分で保管しなければならないこと、および偽造・変造・紛失の危険があること、相続開始後、家庭裁判所の検認手続きを経なければ開封できないこと、検認のための手間がかかることが無くなることになります。
今後は、自筆証書遺言が増えることが予想されますが、内容については、民法の厳格な規定により無効となることも多いため、専門家に相談することをお勧めいたします。
◆まとめ
1.遺言書を保管していた者や遺言書を発見した者は、すぐに家庭裁判所に対して「検認」の請求をしなくてはなりません。
2.「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
3.「検認申立て」が受理されると、検認期日が指定され、相続人やその他利害関係人全員が呼び出されたうえで、遺言書の原本に検認調書が付されます。手続き期間は、申立てから検認まで約1か月はかかります。
4.遺言の執行をするためには,遺言書に「検認済証明書」が付いていることが必要です。
「検認済証明書」の無い遺言書では、不動産や預貯金など遺産の名義変更ができないので注意しましょう。
5.公正証書遺言は、「検認」を受ける必要がありません。
6.2020年7月10日より「遺言書保管法」が施行されます。
7.この制度により、自筆証書遺言を作成したら、遺言書保管所(法務局の本局・支局)に遺言書を保管できます。
8.遺言書保管所において保管されている遺言書については、家庭裁判所での「検認」が免除となります。
9.この制度により、自筆証書遺言のデメリットであった、自分で保管しなければならないこと、および偽造・変造・紛失の危険があること、相続開始後、家庭裁判所の検認手続きを経なければ開封できないこと、検認のための手間がかかることが無くなることになります。
今後は、自筆証書遺言が増えることが予想されますが、内容については、民法の厳格な規定により無効となることも多いため、専門家に相談することをお勧めいたします。