2.「突然相続」って何なの?

相続ワンポイントコラム

◆「突然相続」って何なの?

先日、NHKテレビの番組「クローズアップ現代」で、「突然相続」を取り上げていました。これは、ある日突然、身に覚えの無い相続に巻き込まれる「突然相続」が増えていて、「幼いころ離婚して縁が切れたはずの実の親」や「疎遠な叔父・叔母」などほとんど関わりがないと思っていた親族の死後、血縁関係を根拠に相続権が巡り資産価値の無い住居覚えの無い借金の始末を求められる事態が相次いでいるという現実を紹介した番組でした。

「突然相続」といわれる相続について、以下みていくことにしましょう。

■「突然相続」とは?

「突然相続」とは、ある日突然身に覚えのない相続の案件に巻き込まれてしまうことをいいます。見知らぬ不動産多額の借金相続人であると突然連絡があり、調べてみると全く交流がなかった親族からの相続だったというような事例のことです。

突然相続で降りかかってくるのは、借金だけではありません。
特にトラブルになりやすいのが、資産価値のない土地や家屋など、いわゆる「負動産」です。

この「負動産」の場合は、売却したくても買主があらわれず売却できない物件が多く、毎年課税される固定資産税、草刈費用や家屋が朽ちている場合は取壊し費用などの管理費用も発生することになってしまいます。

■「突然相続」が起こる理由とは?

全く交流が無かった親族からの相続で、相続人であるのに自分では相続人になっていることを認識していない場合は、自分にとっては、突然の相続だと思っても、自分が認識していないだけで、最初から相続人であることになります。例えば、幼い頃に離婚して音信不通であった親の相続の場合などです。

これに対して、本来は相続人では無いのに、本来の相続人である先順位の相続人が、「相続放棄」をしたため、次順位である相続人に、相続権が移っていき、突然相続人になってしまったという場合です。この場合は、本来相続人では無く自分で認識していないことは当然で、突然相続に巻き込まれてしまったことになります。このような理由によって、「突然相続」になる事例が多くなっています。

NHKテレビの番組では、次のような事例を採り上げていました。事業が傾き、多額の借金を抱えていた叔父がいて、その相続人になるのは、相続権の第1順位である配偶者である、そして、子どもです。しかし、妻はすでに亡くなっていて、3人の子ども相続を放棄しました。次に相続人になるのは第2順位である両親ですが、こちらもすでに他界していました。すると、今度は第3順位である兄弟姉妹へ相続権が移ってきます。その兄弟姉妹が亡くなっていた場合は、代襲相続でその子どもである、甥・姪にまで引き継がれます。こうして、被相続人の甥であったこの男性が相続人の1人になってしまったのです。

相続権は、第1順位である相続人のが全員相続放棄をすると、第2順位の相続人である直系尊属に移ります。さらにその直径尊属が全員相続放棄をすれば、第3順位の相続人である兄弟姉妹にまで、その権利義務が及びます。配偶者はいつでも相続権があります。

親族関係が疎遠になり、離婚・再婚などにより家族関係も複雑してきて、全く交流が無い親族も多くなっている現状で、相続放棄しても何の連絡も無いため「突然相続」が起こっています。

被相続人の借金を理由相続放棄するような場合は、順番に相続放棄の手続きをしていく必要がありますので、連絡を取り合って、もれなく手続きすることが必要です。

番組の中で、相続放棄の専門家が、「親族が一堂に会するという機会も少なくなり、親族との関係が疎遠になっている人も多く、ましてその資産状況については全く分からないという人がほとんどだと思います。こうした中で借金なら相続を放棄するが、不動産であればとりあえず相続し、扱いについてはあとで考えればよいという人もいます。しかし、このような対応をとると、相続したあとでトラブルに見舞われることも多く、初動で適切に行動できるかどうかは本当に重要です。1人で悩まずに専門家のアドバイスを聞き、負担を抱え込まないようにしてもらいたいです」 と言っていましたが初動の行動が本当に重要です。

■「突然相続」があった場合どうすればいいの?

このような「突然相続」があった場合は、まず最初に相続財産の調査をすることになります。この調査をする場合、プラスの財産ばかりではなく、マイナスの財産、特に「借金」「連帯保証債務」「保証債務」も、くまなく探すことが必要です。

そのうえで、相続人は、その意思によって、財産を相続するかどうか決めることができます。

1.プラスの財産が多いとき

この場合は、すべての財産・債務を引き継ぐ「単純承認」をします。

2.プラスの財産・マイナスの財産どちらが多いかわからないとき

この場合は、プラスの財産の範囲内で、債務を引き受ける「限定承認」をすることができます。

「限定承認」とは、相続財産の範囲内でのみ債務を弁済することを条件として相続することです。

つまり、どんなに借金があっても、被相続人のプラスの財産の範囲内で返済すればいいので、残りの借金を負うことがありません。逆に、プラスの財産が債務を上回ったときは、債務を弁済した後に残った財産は、相続人が受け取ることができます。ただ、「限定承認」は、財産目録の作成など清算手続きが煩雑で、しかも相続人全員で行う必要があるため、ひとりでも反対すると子の手続きは行えません。このような理由から、「限定承認」はあまり普及していないのが現状です。

3.マイナスの財産が多いとき

この場合は、すべての財産・債務を引き受けない「相続放棄」をすることができます。

ただし、3か月の熟慮期間内に相続の「放棄」「限定承認」もしなかったとき、または期間内であったとしても、相続財産を消費するなどその意思が推断できる場合には、全面的に相続を承認したこと(法定単純承認)になり、相続財産に負債の多い場合でも、相続人の固有財産で弁済する責任を負うことになります。

この 3か月の熟慮期間内に相続の「放棄」「限定承認」もしなかったときは、相続を承認したことになってしまいます。「3か月ルール」と呼ばれています。

突然相続での借金の督促状や相続の通知などが来た場合は、何もしないで放置すると大変なことになってしまうので注意が必要です。

次に「3か月ルール」を詳しくみていくことにしましょう。

◆「3か月ルール」熟慮期間の問題とは?

「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に手続きをしなければなりませんが、この期間を「熟慮期間」といいます。

1.期間制限を設けた制度の趣旨とは?

いつまでも相続について、権利関係が確定しないのは法的安定性に欠けるためです。

相続は相続人だけのためにあるものではなく、相続債権者、受遺者、相続人固有の債権者にも、「相手方が誰になるのか、回収のための財産の帰属はどうなるのか」という意味で重大な関係があり、利害の調整等という観点から原則3か月と定めています。

2.「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは?

以前は、「被相続人の死亡知ったときから」が判例通説でしたが、その後、判例変更され、「被相続人の死亡を知り」かつ「自己が法律上相続人となった事実合わせて知ったとき」が熟慮期間の起算点であると改めました。

3.熟慮期間内において行うべきこととは?

相続を承認するのか、放棄するのか、を決めるためには、その前提として、相続財産の内容について調査する必要があります。そもそも3か月という期間は相続財産の調査期間にあたります。

相続債務について行う調査として、有用なのが個人信用調査機関への情報開示請求です。

日本にある信用調査機関は下記のとおりです。

JICC(日本信用情報機構):主に消費者金融業者が加盟

CIC;主に信販会社が加盟

全国銀行信用情報センター:主に銀行・信金・信組・保証協会等が加盟

しかし、闇金融業者個人間貸借は上記信用調査機関では調査できません

突然相続の場合は、被相続人の財産内容について調査することは難しく限界があるので、専門家に依頼することを考慮しましょう。

4.期間伸長の申立てとは?

もし、3か月の熟慮期間内に調査が完了しなければ、期間伸長申立を行うことができます。

あくまで例外的な措置なので、伸長する理由が必要になります。

理由① 相続財産の種類や保管場所が多く時間を要する

理由② 相続人が海外におり、遠方からの調査のため時間を要する

理由③ 限定承認を進めにあたり相続人間で協議している等

通常、一度の伸長申立3~6か月延長されます。

再度の伸長申立も可能です。

5.最高裁による3か月の起算点の修正とは?(最判昭59.4.27)

社会の変化に伴い親(被相続人)の経済状態の把握が困難になってきて、救済できない事例が多くなってきているため、判例変更したと言われています。

最高裁は、従来通りの「相続人覚知時説」を原則としながら、一定の事情により起算日の例外を認める「起算日例外説」を新に打ち出しました。

一定の事情とは、

①被相続人に相続財産(債務を含む)が全く存在しないと信じたこと

②相続人において上記のように信じるについて相当な理由があること

③相続人において相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があったこと

これまでよりは柔軟に解釈されるようになったものの、あくまで最高裁は「相続財産(債務を含む)が全く存在しないと信じた場合」に限るとする限定説に立っているとされています。

下級審や家裁の実務では、非限定説の解釈を基に相続放棄の受理を認めることもあるようです。

従って、3か月の熟慮期間を過ぎてしまった場合でも、あきらめず相続放棄の専門家に相談するようにすべきです!

◆法定単純承認(みなし単純承認)とは?

3か月の熟慮期間内であっても、いつまでも法律関係が不安定で混乱がもたらされるのを防ぐため、相続人の意思表示が無くても一定の行為をした場合は、相続を単純承認したとみなすと規定されています。

これが、「法定単純承認(みなし単純承認)」と呼ばれており、注意しないと相続放棄するつもりでいたのに、「法定単純承認(みなし単純承認)」に該当して、相続放棄ができなくなってしまうことがあります。

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす(民法第921条)

① 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき(1号)

所定期間内(承認又は放棄をなし得る「3か月内」)に、限定承認又は相続の放棄の手続をとらなかった場合(2号)

③ 相続人に限定承認又は相続の放棄を認めることが公平に反する場合(3号)

「法定単純承認」になる具体的な事例とは?

相続財産の売却、相続財産である家屋の取り壊しや動産の毀損

・保存行為・一部の賃貸借等の管理行為は除外

・相続人が固有の財産で相続債務を返済する行為は除外

・相続した不動産・預貯金等の債権を換価して相続債務を返済する行為は該当するという説あり。

 →相続財産管理人を選任し、相続財産管理人の元で行うべきです。

・アパート・マンションの賃借権の解約は除外

借地権の解約は該当するという説あり。

・相続財産に含まれた債権を取り立てる行為

代物弁済する行為

・株式に基づく株主権の行使

遺産分割協議の参加など

放棄可能な時期である3か月を経過していなくても、「法定単純承認」該当する行為をしてしまったら、相続放棄・限定承認はできなくなりますので、注意が必要です。

■相続放棄した場合は、その後どうするの?

「相続を放棄した者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産と同一の注意をもって、その財産の管理継続しなければならない」(民法第940条1項)

本来、相続放棄した者は、初めから相続人でなかったものとされるので、相続財産とは無関係でありますが、そのまま相続財産が管理されずに放置されると、次順位相続人や受遺者、相続債権者等に損害が生じる可能性があるので、一定期間だけ管理義務が残ることになっています。一定期間とは、次なる財産管理人に引き渡すまでをいいます。

従って、 次順位相続人受遺者、相続人不存在の場合は相続財産管理人管理を引き継ぐまで責任を負うことになります。

特に、空き家問題は今後、確実に増加することが想定されているので、注意が必要です。

「突然相続」があった場合は、「相続放棄」も含めて専門家に相談しましょう!

◆まとめ

1.「突然相続」とは?

「突然相続」とは、ある日突然、身に覚えのない相続の案件に巻き込まれてしまうことをいいます。見知らぬ不動産多額の借金相続人であると突然連絡があり、調べてみると全く交流がなかった親族からの相続だったというような事例のことです。

2.「突然相続」が起こる理由とは?

親族関係が疎遠になり、離婚・再婚などにより家族関係も複雑化してきて、全く交流が無い親族も多くなっている現状で、相続放棄しても何の連絡も無いため「突然相続」が起こっています。

本来は相続人では無いのに、本来の相続人である先順位の相続人が、「相続放棄」をしたため、次順位である相続人に、相続権が移っていき、突然相続人になってしまったという場合がそれに該当します。

3.「突然相続」があった場合どうすればいいの?

負の遺産なら、「相続放棄」を考慮すべきです。「相続放棄」をする場合は、3か月の熟慮期間」「法定単純承認」などに注意が必要です。

「相続放棄」は、初動が重要なので、専門家に相談しましょう

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