10.「不動産」を売却した場合税金はどうなるの?

相続ワンポイントコラム

◆「不動産」を売却した場合税金はどうなるの?

「不動産」を売却した場合、その譲渡で売却利益があれば「譲渡所得税」が課税されます。不動産の所有期間によって税率も異なり、一定の要件に該当すれば特別な控除も受けられます。

ここでは、一般的な個人の譲渡所得税についてみていくことにしましょう。

■譲渡所得税の計算方法とは?

譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算し、特別控除がある場合はその金額を控除して、「課税所得」を算出します。その「課税所得」に「税率」を乗じて「税額」を算出します。

土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得給与所得などの所得と分離(分離課税)して、計算することになっています。

■譲渡所有の区分とは?

土地や建物を売ったときの譲渡所得は、次のとおり所有期間によって「長期譲渡所得」「短期譲渡所得」の二つに区分し、税金の計算も別々に行います。
「長期譲渡所得」とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。
「短期譲渡所得」とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。

「所有期間」とは、土地や建物の取得の日から引き続き所有していた期間をいいます。この場合、相続や贈与により取得したものは、原則として、被相続人や贈与者の取得した日から計算することになっています。

■取得費の計算は?

取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいいます。
なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。また、土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%取得費(概算取得費)とすることができます。

建物の取得費はどう計算するの?

建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額差し引いて計算します。建物の取得費は建物の購入代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引く必要があります。
この減価償却費相当額は、その建物が事業に使われていた場合とそれ以外の場合では異なっており、それぞれ次に掲げる額となります。

1.事業に使われていた場合
建物を取得してから売るまでの毎年の減価償却費の合計額になります。
2.事業に使われていなかった場合
建物の耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額にその建物を取得してから売るまでの経過年数を乗じて計算します。

建物の取得価額×0.9×償却率(※1)× 経過年数(※2)= 減価償却費相当額(※3)

※1 非業務用建物の償却率

(注)「金属造①」・・・軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3㎜以下の建物

   「金属造②」・・・軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3㎜超4㎜以下の建物

※2 経過年数の6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます。

※3 建物の取得価額の95%を限度とします。

■譲渡費用の計算は?

譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。

■税率はどうなるの?

「長期譲渡所得」「短期譲渡所得」とでは、税率が異なります。

「長期譲渡所得」税額=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)

(注) 平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額2.1を所得税と併せて申告・納付することになります。

「短期譲渡所得」税額=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)

(注) 平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。

■特別控除とは?

特別控除の要件に該当する場合は、譲渡所得の計算で、その特別控除金額を控除して税額を算出します。課税譲渡所得が無い場合は、課税されません。また課税譲渡所得がマイナスの場合は、特定の居住用資産の譲渡損失について一定の要件の下で、損益通算及び翌年以降への繰り越しを認める制度があります。

居住用財産の特別控除

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。

適用を受けるための要件は?

自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件全てに当てはまることが必要です。

1.その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

2.家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

適用除外とは?

このマイホームを売ったときの特例は、次のような家屋には適用されません。

1.この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋

2.居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋

3.別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋

その他特別控除

その他、収用等により資産を譲渡した場合5,000万円、特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合2,000万円、特定住宅地造成事業のために土地等を譲渡した場合1,500万円などの特別控除もあります。

■居住用財産の軽減税率とは?

以下の要件に当てはまる所有期間10年を超える長期譲渡所得については、軽減税率の適用があります。

「課税長期譲渡所得金額()」が、

6,000万円以下の部分の金額  ×10 = 税額

6,000万円を超える部分の金額 (A-6,000万円)×15+600万円 = 税額 となります。

この軽減税率の特例を受けるには、次の5つの要件全てに当てはまることが必要です。

1.日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること。
なお、以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
また、これらの家屋が災害により滅失した場合には、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。(注)住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまることが必要です。

イ 取り壊された家屋及びその敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。

ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

2.売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間ともに10年を超えていること。

3.売った年の前年及び前々年この特例を受けていないこと。

4.売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないこと。ただし、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除の特例軽減税率の特例は、重ねて受けるこができます。

5.親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと

■相続した不動産の場合は?

相続によって取得した不動産については、包括的に承継するため、取得費所有期間などはすべて被相続人の地位を引き継ぐことになります。従って、相続不動産を売却する場合は、譲渡所得税の計算は、被相続人が購入した時の取得費などを引き継ぎ、相続人が支払った登記費用、仲介手数料など譲渡費用で計算されることになります。

居住用財産の特別控除など、「居住用財産」に該当するかどうかは、子などの相続人がその相続した家屋に居住していたか、居住していなかったかによって税金に違いが出てきます。

子などの相続人がその家屋に居住していた場合は、「居住用財産」とみなされ、以下の特例の対象となります。

●3000万円の特別控除の特例
●10年超所有の場合の軽減税率の特例
●特定の居住用財産の買換え特例
●マイホームの買換えの場合の譲渡損失の繰越控除
●特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除など

一方、子などの相続人がその家屋に居住していなかった場合は上記の特例は受けられず、原則として譲渡所得への所得税・復興特別所得税と住民税がそのまま課税されることになります。。

なお、親の自宅だった空き家を相続した場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から3000万円を控除できる特例があります。詳しくは、相続ワンポイントコラム「12.「親が亡くなる直前まで住んでいた自宅」を売却する時、3000万円特別控除が受けられるかも?」を参照して下さい。

■申告・納付はどうするの?

譲渡所得の申告・納付は、資産を譲渡した日の属する年の翌年の216日から315日の間に住所地を管轄する税務署に行うことになります。

資産を譲渡した日は、原則として、売買など譲渡契約に基づいて資産を買主などに引き渡した日をいいますが、売買契約などの効力発生の日に譲渡があったものとして確定申告することもできます。
契約の効力発生の日とは一般的には契約締結の日をいいます。

◆まとめ

1.「不動産」を売却した場合、その譲渡で売却利益があれば「譲渡所得税」が課税されます。不動産の所有期間によって税率も異なり、一定の要件に該当すれば特別な控除も受けられます。

2.譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算し、特別控除がある場合はその金額を控除して、「課税所得」を算出します。その「課税所得」に「税率」を乗じて「税額」を算出します。

3.土地や建物を売ったときの譲渡所得は、次のとおり所有期間によって「長期譲渡所得」「短期譲渡所得」の二つに区分し、税金の計算も別々に行います。

「長期譲渡所得」とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。
「短期譲渡所得」とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。

4.「長期譲渡所得」「短期譲渡所得」とでは、税率が異なります。

「長期譲渡所得」税額=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)

「短期譲渡所得」税額=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)

(注) 平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額2.1を所得税と併せて申告・納付することになります。

5.マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といい、適用を受けるためには一定の要件に当てはまることが必要です。

6.相続によって取得した不動産については、包括的に承継するため、取得費や所有期間などはすべて被相続人の地位を引き継ぐことになります。従って、相続不動産を売却する場合は、譲渡所得税の計算は、被相続人が購入した時の取得費などを引き継ぎ、相続人が支払った登記費用、仲介手数料など譲渡費用で計算されることになります。

7.譲渡所得の申告・納付は、資産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日の間に住所地を管轄する税務署に行うことになります。

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