17.「遺言」って何なの?基本知識を知っておこう!

知っておきたい法律の知識
  1. ◆「遺言」って何なの?基本知識を知っておこう!
  2. ◆「遺言」とは?
    1. ◆遺言の種類と特徴とは?
      1. ■遺言書の種類
      2. ■遺言書の種類によるメリット・デメリット
    2. ◆家庭裁判所での「検認」手続きとは?
    3. ◆「遺言書保管法」とは?
  3. ◆「遺言」はどうして必要なの?
      1. 1.自分が築いてきた大切な財産や先祖から受け継いできた財産を、最も有効に、そして有意義に、次世代に引き継ぐ手段であるからです。
      2. 2.それぞれの家族の実態を考慮した実質的公平を図る手段であるからです。
      3. 3.相続人などへの自分の想いを伝えるための手段であるからです。
      4. 4.相続人以外の人へ遺贈するための手段であるからです。
      5. 5.紛争が予想される家族関係がある場合など、特に必要な準備としての手段であるからです。
      6. 6.遺産分割協議の困難性や長期化が予想される場合など、その弊害を回避する手段であるからです。
  4. ◆「遺言」をするとどんなことができるの?
    1. 1.「遺言」のとおりに遺産分割ができることになります!
      1. 相続人全員で遺産分割の話し合いをしなくてもいいので、もめることは無くなります!
    2. 2.「遺言」によって相続人以外の人にも遺産を遺贈することができるようになります!
      1. 「遺言」により遺産を無償で相続人または他人に与えることができるようになります。
    3. 3.「遺言」によって死後の面倒な相続手続きがスムーズに行えるようになります!
    4. 4.その他「遺言」では、以下のようなことができるようになります。
  5. ◆特に「遺言」が必要な人とは?
    1. 1.遺産に不動産がある場合
    2. 2.子供がいない夫婦の場合
      1. 妻にすべての財産を相続させたい場合は、「遺言」が必要となります!
    3. 3.法定相続人以外に財産を渡したい場合
      1. 「遺言」だけが、法定相続人以外の人に財産を与えることができます!
    4. 4.法定相続人がいない場合
      1. 「遺言」が無い場合は、残された財産は国庫に帰属することになります。
    5. 5.行方不明の人がいる場合
    6. 6.相続人が認知症の場合
    7. 7.先妻の子供と後妻がいる等、親族関係が複雑な場合
    8. 8.会社を経営している場合や農業を営んでいる場合
    9. 9.相続人に感情的な対立が強い場合
    10. 10.相続人の人数が多く、遺産分割協議に時間がかかりそうな場合
    11. 11.相続税の申告が必要な場合
  6. ◆「法的に有効な遺言」と「想いを伝える遺言」とは?
  7. ◆遺言を訂正等するにはどうすればいいの?
  8. ◆遺言の撤回及び取消しとは?
    1. 1 撤回の趣旨とは?
    2. 2 撤回の方法とは?
    3. 3 撤回された遺言の効力とは?
      1. ⑴ 趣旨
      2. ⑵ 例外
  9. ◆遺言書を書くときの注意点とは?
    1. ■署名、日付、押印は必ず忘れずに!
    2. ■用紙と使用する文字はどうするの?
    3. ■相続人名簿と相続財産目録を作る!
    4. ■遺言者の意思能力の立証に留意する!
    5. ■「相続させる」と「遺贈する」という文言では大きな違いが?
      1. ■「相続させる」と「遺贈する」という文言での差異
    6. ■法律上の形式に反する遺言の効力はどうなるの?
  10. ◆遺言執行者とは?
  11. ◆民法(相続法)改正による配偶者の権利を知っておこう!
    1. ①配偶者居住権の新設
    2. ②配偶者短期居住権の新設
    3. ③配偶者保護のための方策(「持戻し免除」の意思表示の推定)
    4. ■「配偶者の権利」を考慮して遺言書を作成する!
  12. ◆特に「遺留分」を考慮しましょう!
    1. ■遺留分を考慮して遺言書を作成しよう!
    2. ■遺留分とは?
    3. ■「遺留分の割合」とは?
    4. ■ 遺留分額の算定はどうするの?
    5. ■民法改正で「遺留分侵害額請求権」に変更されたとは?
      1. ■遺留分侵害額請求の消滅とは?
    6. ■遺留分の放棄とは?
  13. ◆まとめ

◆「遺言」って何なの?基本知識を知っておこう!

「遺言」とは、財産の承継など一定の事項について、死後の法律関係を定めるための遺言者の最終意思表示のことです。

「ゆいごん」とも「いごん」とも言います。法律用語では「いごん」と読まれることが多いようです。以下、「遺言」について、詳しくみていきましょう。

◆「遺言」とは?

亡くなると同時身分上あるいは財産上のことがらについて、法律上の効力を生じさせようとする意思表示をいいます。

◆遺言の種類と特徴とは?

遺言の方式には、「普通方式」「特別方式」があります。「特別方式」は、死亡の危急に迫った者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言があります。

ここでは、一般的な「普通方式」の遺言をみていきましょう。

普通の方式による遺言は、「自筆証書」「公正証書」又は「秘密証書」によってしなければならないと定められています。

■遺言書の種類


自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 遺言者がその全文、日付及び氏名を自筆(ワープロ、タイプではダメです。)し、これに印を押す。民法改正により、財産目録については、ワープロ作成や登記簿謄本・預金通帳等のコピーでも認められることになりました。 2人以上の証人立会のもとに遺言者が、公証人に口授して、これを公証人が筆記し、遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させ、遺言者、証人2名以上、公証人が署名、押印する。 遺言者が遺言証書を作り、署名、押印し、証書に押した印章で封印し、公証人と証人2人以上の面前に提出して自己の遺言証書である旨並びにその筆者の住所・氏名を申述する。 封筒に遺言者、証人2名以上が署名、押印、公証人が署名、押印する。
証人 不要 2名以上必要 2名以上必要
印鑑 認印も可 遺言者は実印 証人は認印可 認印も可
遺言書の保管 遺言者の保管 制度新設により原本は遺言書保管所でも可能になる 2020年7月10日以降 原本は公証役場で保管 遺言者には正本と謄本が交付される 遺言者が保管
検認 必要 遺言書保管所に保管する場合は、不要 不要 必要

民法改正によって、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の「目録」を添付する場合には、その目録については、自書することを要しないことになりました。

この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、押印しなければならないことになっています。

従来、口がきけない者耳が聞こえない者公正証書遺言の方式を実施することは無理でした。しかし、口がきけない者や耳が聞こえない者にも公正証書遺言を利用させる必要があることから、通訳人通訳による申述自書による方法を認めることにより、これらの者も公正証書遺言を利用できるように民法を改正いたしました。

■遺言書の種類によるメリット・デメリット


メリット デメリット
自筆証書遺言 手軽に作成できる 遺言の内容を秘密に
しておける
(遺言書保管所に預ける場合除く)
遺言書保管所に預ける場合は、偽造や紛失の恐れが無い
遺言書保管所に預ける場合は、検認手続きが不要で、
相続人に迷惑をかけずにすむ
様式不備で無効になる恐れがあるがある
偽造や紛失の恐れがある
死後発見されないことがある
開封に家庭裁判所の検認手続きが必要で
相続人の手間がかかる(遺言書保管所に預ける場合除く)
遺言書保管所に預ける場合は、内容を遺言書保管官に知られる
公正証書遺言 公証人が作成するので、様式不備で無効になる
恐れが少ない
原本を公証役場に保管するので、偽造や紛失の恐れが無い
検認手続きが不要で、相続人に迷惑をかけずにすむ
公証人手数料などの費用が発生する
内容を公証人と証人に知られる
秘密証書遺言 遺言書の内容を秘密にしておける
代筆やワープロで作成できる
代筆の場合、筆記者の住所、氏名を
公証人に申述することが必要
様式不備で無効になる恐れがある
紛失の恐れがある
公証人手数料などの費用が発生する
開封に家庭裁判所の検認手続きが必要で相続人の手間がかかる

◆家庭裁判所での「検認」手続きとは?

遺言書を保管していた者や遺言書を発見した者は、すぐに家庭裁判所に対して「検認」の請求をしなくてはなりません。

「検認」手続きの主な目的は、家庭裁判所が遺言書の現況を記録して偽造・変造を防ぐことと、遺言書の存在を相続人や受遺者など利害関係人知らせることです。

「検認済み証明」の無い遺言書では、不動産や預貯金など遺産の名義変更ができないので注意しましょう。

詳細はコラム【知っておきたい法律の知識・19.「検認手続き」ってどうするの?】を参照して下さい。

◆「遺言書保管法」とは?

相続法改正の一環で、「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」に基づく 自筆証書遺言原本の公的保管制度が創設され、2020年7月10日より実施されます。

自筆証書遺言を作成したら、本人が申請書と添付書類を用意の上、遺言書保管所(法務局の本局・支局)に来庁して手続きを行います。

遺言書保管所では、遺言書を画像データ化して、原本を保管します。遺言者はいつでも遺言書の閲覧ができます。

相続開始後は、相続人等は、「遺言書の保管の有無に関する証明書」の交付や、遺言書の写し「遺言書情報証明書」閲覧および交付が受けられます。

遺言書保管所において保管されている遺言書については、家庭裁判所での「検認」不要となります。

ただし、遺言書保管所では、遺言の内容についての相談は受け付けていません。

これにより、自筆証書遺言デメリットであった、自分で保管しなければならないこと、および偽造・変造・紛失の危険があること、相続開始後、家庭裁判所の検認手続きを経なければ開封できないこと、検認のための手間がかかること無くなることになります。

今後は、自筆証書遺言が増えることが予想されますが、内容については、民法の厳格な規定により無効となることも多いため、専門家に相談することをお勧めいたします。

◆「遺言」はどうして必要なの?

次のようなことをするための「手段」として「遺言」はとても重要になってきています。

1.自分が築いてきた大切な財産や先祖から受け継いできた財産を、最も有効に、そして有意義に、次世代に引き継ぐ手段であるからです。

2.それぞれの家族の実態を考慮した実質的公平を図る手段であるからです。

3.相続人などへの自分の想いを伝えるための手段であるからです。

4.相続人以外の人へ遺贈するための手段であるからです。

5.紛争が予想される家族関係がある場合など、特に必要な準備としての手段であるからです。

6.遺産分割協議の困難性や長期化が予想される場合など、その弊害を回避する手段であるからです。

◆「遺言」をするとどんなことができるの?

1.「遺言」のとおりに遺産分割ができることになります!

相続人全員で遺産分割の話し合いをしなくてもいいので、もめることは無くなります!

「遺言」で相続人の法定相続分と異なった相続分を指定することができます。この相続分の指定は

「遺言」によらなければなりません。また、「遺言」の効力発生の時から相続開始の時遡って

 力を生じ、各共同相続人の相続分が定まることになります。

「例えば、自分の会社の株式は後継者である長男にすべて相続させる」など遺産分割方法の指定

「遺言」でのみできます。

「遺言」で相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することもできま

す。 その後、事情の変更によって遺産分割を禁止する必要がなくなった場合は、相続人の協議

家庭裁判所の審判による分割も可能とされています。

「遺言」の内容は、「遺留分侵害額請求権」による制限を受けることになりますので、遺言作成においては、留意する必要があります。「遺留分」については、後述します。

2.「遺言」によって相続人以外の人にも遺産を遺贈することができるようになります!

「遺言」により遺産を無償で相続人または他人に与えることができるようになります。

例えば、内縁の妻、LGBTのパートナーの方、相続人でない長男の嫁、孫、甥や姪などに遺産を与

えることができます。

相続人がいない「おひとりさま」の場合、「遺言」で残された財産を自分の望むところ遺贈する

ことができます。

3.「遺言」によって死後の面倒な相続手続きがスムーズに行えるようになります!

「遺言」が作成されていない場合の死後の相続手続き預金口座解約不動産名義変更登記

ど)はとても煩雑で時間がかかります。相続手続きで大切な家族に大変な思い、嫌な思いをさせな

いためにも、きちんとした「遺言」を作成しておくことが必要になってきます。

例えば、相続人のなかに未成年がいる場合、相続人のなかに音信不通の人がいる場合、相続人のな

かに認知症の人がいる場合、相続人のなかに海外勤務者など遠方に住んでいる方がいる場合など

は「遺言」を作成しておかないと、相続手続きをするために別の手続きが必要になり煩雑化長期

が避けられないことになります。

相続手続き等にに関する詳細は、コラム「知っておきたい法律の知識・12.「相続手続き」・「死後事務手続き」とは何なの?」以下を参照して下さい。

4.その他「遺言」では、以下のようなことができるようになります。

認知、未成年後見人及び後見監督人の指定、相続人の廃除及び廃除の取消し、特別受益の持ち戻し

の免除、相続人相互の担保責任の指定、遺言執行者の指定、遺贈の減殺方法の指定、一般財団法人

の設立、信託の設定、祭祀承継者の指定、生命保険受取人の変更などができるようになります。

◆特に「遺言」が必要な人とは?

以下のような人は、「遺言」を作成しておけなければ、相続トラブルにまきこまれるおそれが高く、また相続手続き別な手続きが別途必要となるため煩雑さや長期化が避けられないことになります。ですから、特に「遺言」を作成しておくことをおすすめいたします。

1.遺産に不動産がある場合

分割しにくいため、争いの元となりやすいためです。単純に共有にしてしまうと処分などでも

めることになり、問題の先送りになってしましますので注意が必要です。

(財産が自宅だけの場合、不動産評価をどうするか、借地権の場合など)

「遺言」どうするかを決めておかないと後日もめる原因になってきます。

2.子供がいない夫婦の場合

妻にすべての財産を相続させたい場合は、「遺言」が必要となります!

亡くなったご主人に親がいる場合は、「遺言」が無いと法定相続分は奥さんが2/3、親が1/3とな

り、 親がいない場合は、亡くなった方に兄弟姉妹がいる場合は、「遺言」が無いと法定相続分は

奥さんが 3/4、兄弟姉妹が1/4となってしまい、奥さんが全ての財産取得することができなくな

ります

3.法定相続人以外に財産を渡したい場合

「遺言」だけが、法定相続人以外の人に財産を与えることができます!

4.法定相続人がいない場合

「遺言」が無い場合は、残された財産は国庫に帰属することになります。

財産を有効に役立てるために特定の人・法人などに遺贈するか、寄付する場合は、「遺言」必要となります。

5.行方不明の人がいる場合

「遺言」無い場合は、家庭裁判所「不在者の財産管理人」の選定を申請し、「不在者の財産管理人」が選任されてから、「不在者の財産管理人」を含めて遺産分割協議をすることが必要となります。「不在者の財産管理人」が関係することで遺産分割協議が完了するまで長期化が予想されることになります。

6.相続人が認知症の場合

「遺言」無い場合は、家庭裁判所「成年後見人」の選定申し立てを行い、「成年後見人」を含めて遺産分割協議を行うことが必要になってきます。「成年後見人」が関係することで遺産分割協議長期化することが予想されます。

7.先妻の子供と後妻がいる等、親族関係が複雑な場合

財産が形成された経緯等に配慮したり、関係が疎遠の場合など遺産分割協議が順調に進みにくい

とがあります。「遺言」があれば相続トラブルを避けることができるようになります。

8.会社を経営している場合や農業を営んでいる場合

会社の事業農業の事業「円滑な承継」を進めるために、遺言者の所有する自社株式・事業資産

の配分農地の所有権などの配分などを考慮することが必要となってきます。

「遺言」が無いと、「法定相続分」が基本に遺産分割協議が行われることになってしまい、事業の

円滑な承継難しくなる場合もでてくることになります。

9.相続人に感情的な対立が強い場合

「遺言」が無ければ、相続トラブルが避けられないことになります。

10.相続人の人数が多く、遺産分割協議に時間がかかりそうな場合

相続人それぞれの意向があり、協議時間がかかる可能性があります。

11.相続税の申告が必要な場合

相続税納税期限があり、納税までに遺産分割協議を完了させて申告納付する必要があるため、

「遺言」があった方が順調に進めやすいことになります。

◆「法的に有効な遺言」と「想いを伝える遺言」とは?

「法的に有効な遺言」とは、法律で定められた方式に従って作成されたもので、財産の承継・処分

方法相続人の排除遺言執行者の指定認知などを行うものをいいます。

「遺言」には、厳格な方式があり、それが欠けていれば法的効力無効になってしましますので、

正確な知識が必要となります。不安があれば、専門家に相談することをお勧めいたします。

「想いを伝える遺言」とは、「遺言」に含まれていても特に法的な効力有しないものをいいま

す。「付言事項」といって、自分の想いを遺す内容となっています。葬式のこと、臓器提供のこ

と、家族へのメッセージなどがあります。

相続は「平等」にはなりにくい理由があります。

分ける相手が兄弟姉妹など他人ではないこと、介護に関わったかどうか、その他の事情や状況によ

り、相続人各人想い心理的、経済的な状況異なっています

なぜなら人間は感情思考多面性を持っている繊細な生き物であり、同じ環境で育っても一人ひ

とり考え方も違うし、お金に対する価値観も違います。また、同じ人間でも置かれている経済状態

によっても違っています

ですから、「遺言」によって、各相続人のいろいろな性格や環境、要素を考慮して、できるだけ

「公平」を目指すことも大事なことになります。

そのため、「想いを伝える遺言」つまり「付言事項」をしっかり書いて遺言者の想いを伝えること

が重要です。

何故、遺産をこのように分けるようにしたのか、それにはこんな理由があるなど遺産分割に至った

経緯、これまでの家族に対する感謝の気持ち初めて家庭を持った喜び、長男が生まれた喜び、

長女の小学校入学式のうれしさ、次男の高校入試合格の喜びなど、家族(相続人)に「メッセー

ジ」を残すことが大事なのです。

大切な人を失って悲しみにくれている家族に「メッセージ」を残すことは、生きる勇気を残すこと

になるのです。

付言事項は、ハートを残すことであり、これが無いと、財産の方にばかり目が向いてしまい、せっ

かくの「遺言」「冷たい財産分けの報告書」に過ぎなくなってしまいます。

「遺言」「法的に有効な遺言」「想いを伝える遺言」とが、バランスよく両輪になるように

すると、血がかよった家族に対する「贈り物」に変るのです!

「遺言」は作成する意思能力が必要です。認知症になってしまいますと作成することができません。ですから、元気なうちに是非作成することをお勧めいたします!

◆遺言を訂正等するにはどうすればいいの?

「自筆証書遺言(目録を含む)」の中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所にを押さなければ、その効力を生じないことになっています。

つまり、以下のように加除・訂正します。

①遺言書に文字を加入する場合は、遺言者のを押し、遺言書の文字を削除・訂正する場合は原文が判読されるように2本線で消し、変更後の文言書き入れます。

②それぞれの変更後の文言書き入れた部分に、遺言書に押印した印鑑と同じものを押します。

③変更した部分の左部または上部欄外「本行〇字加入〇字削除」などと付記するか、遺言書の末尾「本遺言書第〇項第〇行目〇字加入」などのように付記します。

付記した部分に、遺言者本人署名します。

この加除・訂正方法は、厳格に適用されますので、規定通りで無い場合は、訂正が「無効」になることもありますので、できれば書き直した方が安全です。

◆遺言の撤回及び取消しとは?

1 撤回の趣旨とは?

遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部撤回することができます。

遺言は、遺言者の死亡まで効力は発生しませんので、遺言の内容に拘束されるわけでもありませんし、撤回により第三者の権利が害されるわけでもありません。そこで、遺言者の最終的な意思を尊重するために、遺言撤回の自由の原則が採用されました。なお、遺言者は、その遺言を撤回する権利放棄できないことになっています。

2 撤回の方法とは?

前の遺言後の遺言抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなすことになっています。(1023条1項)

遺言が遺言後生前処分その他の法律行為と抵触する場合も同様とすることになっています。(同条2項)

遺言者故意遺言書破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなすことになっています。遺言者故意に遺贈の目的物破棄したときも、同様とすることになっています。(1024条)

3 撤回された遺言の効力とは?

⑴ 趣旨

撤回行為さらに撤回・取り消した場合、かつて撤回された第1の遺言復活するかは、遺言者の死亡後に生じる問題なので、紛争になるおそれがある。そこで、民法1025条で「撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。」とそのために解決の基準を示しています。

⑵ 例外

錯誤・詐欺・強迫による場合

㋑ 「遺言書の記載に照らし、遺言者の意思原文言復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の復活を認めるのが相当」であるという判例があります。

◆遺言書を書くときの注意点とは?

■署名、日付、押印は必ず忘れずに!

これを、忘れれば遺言は無効となっていまいます。特に、日付で「9月吉日」と記載すれば、日付の特定ができないので無効になります。

印鑑は、認印でも、判例では拇印でも構いませんが、できれば確実に作成したこと意味で実印を押捺することをお勧めします。

署名は、雅号、芸名、ペンネームなどでも、遺言書との同一性が示せるのであれば有効ですが、戸籍上の姓名が望ましいです。

■用紙と使用する文字はどうするの?

遺言には一定の形式が要求されますが、記載する用紙は自由です。筆記用具も自由です。自筆証書遺言では、遺言者本人自筆によりますので、パソコンで作成することはできません。ただし、財産目録については、自筆でなくてもよいことになりました。

使用する文字については、法律上規定が無いので、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字すべて有効です。速記記号、略号、方言や通用語などでもよいとされていますが、普通に理解できるように書くことが大事です。

■相続人名簿と相続財産目録を作る!

人名遺産の指定を間違えないようにすることも大事です。相続人名簿相続財産目録も作っておきましょう。

■遺言者の意思能力の立証に留意する!

自筆証書遺言の争いで多いのが、遺言者の意思能力の有無についてです。公正証書遺言でも問題になった判例があります。それを作成した当時本人が正常な判断能力を有していたことを証拠立てておくことは重要です。「本人が自筆の書面を書いておく」「医師の診断(例えば、長谷川式簡易スケールという認知症の簡単な検査など)を受けて、精神状態の診断書を取っておく」「ビデオで日付を入れて自分の精神状態が分かるよう記録しておく」 などが考えられます。後でトラブルにならないように、健康状態に問題が無い時に、遺言書作成しておくことをお勧めします。

■「相続させる」と「遺贈する」という文言では大きな違いが?

特定の遺産を「相続させる」という文言の場合は、相手相続人に限られ、原則遺産分割方法の指定とされるので、相続開始と同時にその財産固有に取得するものとされています。

特定の遺産を「遺贈する」という文言は、相手は相続人または法定相続人以外の人になり、受遺者に関する遺贈義務相続人全員が引き継ぐことになります。例えば不動産のケースでは、相続人全員ないし遺言執行者からの申請によって、移転登記手続を行う必要があります。

■「相続させる」と「遺贈する」という文言での差異


相続させる 遺贈する
不動産の名義変更手続き 相続人の単独申請できる 包括遺贈・特定遺贈のいずれの
場合も、遺言執行者がいれば
その人と、いなければ相続人
全員が登記義務者となり、
受遺者と共同で登記申請
すること必要
登記無くして第三者に対抗できるか 相続人は第三者に所有権を対抗できる 包括遺贈・特定遺贈のいずれの
場合も、相続登記が無ければ
第三者に対抗できない
遺産が農地の場合、農地法3条の許可がいるのか 農地法の許可が無くても、相続登記できる 包括遺贈の場合は、農地法の
許可は不要
特定遺贈の場合は、農地法の
許可は必要
遺産が借地権・借家兼の場合、賃貸人の承諾が必要か 賃貸人の承諾は不要 包括遺贈の場合は、賃貸人の
承諾は不要
特定遺贈の場合は、賃貸人の承諾は必要

遺言書を作成する場合は、「相続させる」「遺贈する」という文言に注意して作成することをお勧めします。

■法律上の形式に反する遺言の効力はどうなるの?

「口頭」による遺言の効力については、遺言者が単に口頭で述べただけのもの無効ですが、公正証書遺言の場合には、本人が署名できないとき、公証人がその内容を付記することで、遺言有効に成立します。

「ビデオテープ」「DVD」による遺言の効力については、遺言の形式要件である本人の署名押印無いため、無効となります。遺言としては無効でも、記録しておくことで、遺言書存在していたことや、内容についての証拠になる場合があります。

◆遺言執行者とは?

遺言者が、家族など相続人のために、せっかく「遺言書」を作成していても、それだけでは、ただの紙切れに過ぎません。遺言者が亡くなった後に、誰かがその内容を実現する行動を起こさなければ、遺言者の想いは実現されません。

「遺言執行」とは、遺言があった場合に、その内容のとおり実現するための手続きのことで、「相続人全員が共同で遺言内容を実現する方法」と「遺言執行者のもとで遺言内容を実現する方法」とがあります。

本来、遺言の内容の実現は、遺言者の権利義務の承継人たる相続人が共同で行うべきでありますが、遺言の内容によっては、相続人間での利害対立といった理由から、相続人自身による「公正な執行」が期待できない場合があります。

このような場合に、遺言執行者に遺言の執行を委ねることにより、遺言の適正かつ迅速な執行の実現を可能とするのが、「遺言執行者制度」です。

遺言「遺言執行者」指定しておくことができます。

「遺言執行者」とは、遺言の内容を実現するため、遺言の執行に必要な一切の権利義務を有する人で、相続財産の管理処分などに関する権限を持っています。以前は、「遺言施行者」相続人全員の代理人とみなされていましたが、民法改正で、「遺言執行者」がその権限内で遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接その効力が生じることが明記されました。

「遺言執行者」が指定されていれば、名義変更手続き等がスムーズに進みます。 また、子の認知相続人の排除などが遺言書に記載されている場合は、「遺言執行者」しかできない行為なので、「遺言執行者」選任することが必要になります。

「遺言書」に「遺言執行者指定が無い」場合で、「特定財産を相続させる」旨の無い遺言書の時は、不動産や預貯金の名義変更手続きは、相続人全員で行うことになります。

遺言で、「遺言執行者」指定しておくことも、考慮する必要があります。

「遺言執行者」についての詳細は、コラム【知っておきたい法律上の知識 「20.「遺言執行者」って誰なの?何ができるの?」】を参照して下さい。

◆民法(相続法)改正による配偶者の権利を知っておこう!

相続法の改正により、「配偶者」は、居住遺産分割において、特別に保護された権利があることとなりました。

①配偶者居住権の新設

生存配偶者相続開始時に、居住していた被相続人所有の建物を対象に、配偶者に終身又は一定期間、当該建物を無償で使用収益できる権利が創設されました。これを「配偶者居住権」といいます。

居住建物の権利を、「配偶者居住権」「負担付所有権」に分けることができるようになりました。

「配偶者居住権」評価額は、配偶者の年齢などを基に計算されますが、当然「所有権」より低くなるので、その分預貯金等の相続分を増やし老後資金を確保しやすくなります。

「配偶者居住権」は、その配偶者が死亡すると消滅するので、「負担付所有権」を取得した相続人等は、その時点で完全な所有権を取得することになります。

②配偶者短期居住権の新設

配偶者相続開始時に遺産に属する建物居住していた場合、一定期間の間、無償で当該建物に住み続けることができる権利創設されました。これを「配偶者短期居住権」といいます。

相続や遺贈に関する遺言が無い時は、遺産分割によって誰が居住用建物を相続するか決まった日、または相続開始から6か月が経過する日、いずれか遅い日までの期間、居住建物を無償で使用できる権利です。

また、居住建物の所有者が、相続や遺贈に関する遺言決まっている場合は、その所有者が「配偶者短期居住権」消滅申し入れた日から、6か月が経過する日までの期間無償居住建物を使用できる権利です。

③配偶者保護のための方策(「持戻し免除」の意思表示の推定)

婚姻期間 20 年以上の夫婦間で、居住用不動産遺贈又は贈与がされた場合は、「持戻し免除の意思表示」があったもの推定することになりました。「持戻し免除の意思表示の推定」といいます。

これにより、遺言「持ち戻しの免除」が記載されていなくても、配偶者へ遺贈又は贈与された居住用不動産は、配偶者固有の権利になり、相続財産には含まれ無いことになります。

■「配偶者の権利」を考慮して遺言書を作成する!

従って、遺言書を作成する場合は、「自宅獲物については、妻○○に配偶者居住権を相続させる」などの文言を考慮して作成することをお勧めします。

「相続法の改正」についての詳細は、コラム【知っておきたい法律上の知識 「25.「改正相続法」はどんなところが変わったの?」】を参照して下さい。

◆特に「遺留分」を考慮しましょう!

遺言書を作成する場合、相続分の指定や遺贈などは、遺言者の自由ですが、すべての財産を勝手に相続人以外の人遺贈してしまう場合には、遺された相続人の生活や相続の期待が守られなくなり、あまりに不公平になってしまいます。

そこで、そうした不公平を緩和するための制度として「遺留分」があります。

■遺留分を考慮して遺言書を作成しよう!

遺言書」を作成する場合は、遺留分を考慮することが必要です。せっかく「遺言書」を書いたのに、遺留分侵害があった場合は、遺留分侵害額請求をされてしまい、思わぬトラブルになることもあります。

■遺留分とは?

遺留分」とは、一定の相続人のために法律上確保されるべき最低限の相続できる割合をいいます。

「遺留分を有する相続人」は、兄弟姉妹以外相続人全部です。

つまり、配偶者、子、直径尊属です。子については、代襲相続であっても認められます。
胎児についても生まれてくれば遺留分を有します。

■「遺留分の割合」とは?

「直径尊属のみ」が相続人の場合=法定相続分の「1/3」

「その他」の場合=法定相続分の「1/2」となります。

■ 遺留分額の算定はどうするの?

遺留分額の算定」は以下の計算式により算定します。

【{被相続人が死亡時に有した財産の額}+(贈与された財産の額)-(相続債務)】× 遺留分率

相続人以外に対する贈与は、相続開始前1 年間になされたものに限り算入します。

相続人に対する贈与は。相続開始前10 年間にされた、婚姻・養子縁組・生計の資本として贈与された財産に限り算入します。

負担付贈与は、目的の価額から負担の価額を控除した額を算入します。

また、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなした贈与は、上記の期間制限に関わらず、算入の対象となりますので、注意が必要です。

■民法改正で「遺留分侵害額請求権」に変更されたとは?

民法改正で、「遺留分減殺請求権」「遺留分侵害額請求権」変更になり、「金銭債権化」しました。「遺言」においても。「遺留分」は侵害できず、侵害した場合は、遺留分権利者は、遺贈や贈与 を受けた相手方に対して「遺留分侵害額請求権」による金銭請求ができます。

■遺留分侵害額請求の消滅とは?

遺留分侵害額請求権の行使期間は、1年間です。この「1年間」の起算日は、相続開始または遺留分を侵害することを知った日からになります。また、相続の開始の時から10年を経過したときは、遺留分侵害額請求権が消滅します。

■遺留分の放棄とは?

相続開始前の「相続の放棄」は認められませんが、「遺留分の放棄」は認められます。
相続開始前「遺留分の放棄」には、家庭裁判所許可が必要です。

相続開始後「遺留分の放棄」は、自由に行うことができます。放棄の方法には、特段の規定がありませんので、遺産分割協議の場で表明しても有効です。

詳細はコラム「知っておきたい法律の知識・18.「相続人なのに遺産を全然もらえないの?(遺留分とは?)」を参照して下さい。

◆まとめ

1.遺言とは、亡くなると同時身分上あるいは財産上のことがらについて、法律上の効力を生じさせようとする意思表示をいいます。

2.普通の方式による遺言には、「自筆証書」、「公正証書」、「秘密証書」があります。

3.遺言があれば、相続人全員で遺産分割の話し合いをしなくてもいいので、もめることは無くなります!

4.「遺言」によって相続人以外の人にも遺産を遺贈することができるようになります!

5.「遺言」によって死後の面倒な相続手続きスムーズに行えるようになります!

6.特に「遺言」が必要な人は、すぐに作成することをお勧めします!

7.「遺言」には作成方法注意点がありますので、それに留意して作成しましょう!

8.「遺言」の「付言事項」家族に対するメッセージなので必ず書きましょう!

9. 「遺言執行者」を遺言で指定しておきましょう!

10.民法(相続法)改正による配偶者の権利を知っておこう!

11.「遺言書」を作成する場合は、遺留分を考慮して作成しましょう!

12.「遺言」認知症になってしまうと作成できません元気なうちに是非作成することを お勧めいたします!

タイトルとURLをコピーしました